マルヴァジーア

マルヴァジーア：地中海に生まれた多様なワイン用ブドウ

マルヴァジーア (Malvasia) は、地中海地域を中心に世界各地で栽培される、歴史あるワイン用ブドウ品種群の総称です。その起源は古く、ギリシャのクレタ島が有力な候補地とされています。

歴史と名称の由来

「マルヴァジーア」という名前は、ペロポネソス半島東部にあるモネンヴァシア (Monemvasia) という中世の要塞に由来すると考えられています。この港は、ワイン交易の中心地として栄え、マルヴァジーアワインはヴェネツィア商人によって広く交易されました。クレタ島由来説も存在しますが、学術的には支持されていません。

中世には、マルムジー(Malmsey) という名称もマルヴァジーアワインに広く用いられましたが、現代では甘口のマデイラワインを指す場合がほとんどです。

多様な品種

マルヴァジーアには多くの系統があり、マルヴァジーア・ビアンカ、マルヴァジーア・ネグラ、マルヴァジーア・ディ・カンディア・アロマティカなど、数多くの品種が存在します。これらは白ワイン、赤ワイン、デザートワインなど、幅広いワインを生み出します。

主要な生産地域

マルヴァジーアはイタリア、スロベニア、クロアチア、フランス（コルシカ島）、イベリア半島、カナリア諸島、マデイラ島、アメリカ合衆国、オーストラリア、ブラジルなど、世界中で栽培されています。イタリア国内ではフリウリ＝ヴェネツィア・ジュリア州、ロンバルディア州、プッリャ州など、多くの地域で生産されています。

各国の品種と特徴

クロアチア

マルヴァジヤ・イスタルスカはイストリア半島を代表する白ワイン品種。ヴェネツィア商人によってギリシャから持ち込まれたとされています。

イタリア

マルヴァジーア・ビアンカは、イタリアで最も広く栽培されている品種の一つ。他の品種とのブレンドにも使用されます。マルヴァジーア・ネーラは赤ワイン品種で、主にブレンド用として用いられます。歴史的には、甘口デザートワインの生産にも使用され、高級ワインとして珍重されてきました。近年では、シチリア島のリーパリ島で生産されるマルヴァジーア・デッレ・リーパリが注目されています。

ポルトガル

ポルトガルでは12種以上のマルヴァジーア系の品種があり、マルヴァジア・フィーナはポートワインの製造に使用されます。マルヴァジア・カンディダは甘口のマデイラワインであるマルムジーの生産に使用されます。

スロベニア

イスタルスカ・マルヴァジヤは、イストリア半島のスロベニア領で栽培される品種。成熟した果実からは甘口のデザートワインが造られます。

ブドウ栽培とワインの特徴

マルヴァジーアは乾燥した気候と水はけのよい土壌を好みます。ワインの特徴は品種によって異なりますが、マルヴァジーア・ビアンカをベースとした白ワインは、豊かなアロマと柔らかな口当たりが特徴です。赤ワインは、チョコレートのような風味と花のアロマが特徴です。酒精強化ワインは、スモーキーな風味と鋭い酸味が特徴です。

マルムジー

かつて「マルヴァジア」と「マルムジー」はほぼ同義でしたが、現在はマルムジーは甘口のマデイラワインを指します。歴史的には、様々なブドウ品種から作られていましたが、EU加盟後、マルヴァジーア種を85％以上含むことが規定されました。英国史においては、ヨーク朝エドワード4世の弟であるクラレンス公がマルムジーワインで溺死させられたという伝説が残っています。

まとめ

マルヴァジーアは、その起源、多様な品種、広範な栽培地域、そして多様なワインスタイルによって、ワインの世界において重要な地位を占めるブドウ品種群です。その歴史と多様性を理解することで、より深くワインを楽しむことができるでしょう。

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