マンティコア

マンティコア：人面獣身の伝説の怪物

マンティコアは、ライオンの胴と人間の顔を持つ、恐ろしい人食い怪物として知られています。その起源は古代ペルシアに遡り、インドの獣についての伝聞がもとになったとされています。

起源と伝播

マンティコアの原型は、古代ペルシア帝国の宮廷医師クテシアスが、ペルシア語で「人食い」を意味するマルティコラスという獣について記述したことに始まります。この記述がギリシア語に翻訳され、プリニウスの『博物誌』でマンティコラと誤記されたことでヨーロッパに広まりました。

プリニウスは、マンティコアを古代エチオピアに生息する獣としており、クロコッタと同様に人語を真似ると述べています。

形態と特徴

マンティコアは、一般的に以下のような特徴を持つとされています。

人間の顔と淡青色の眼
ライオンのような胴体と赤い毛並み
3列に並んだ鋭い牙
サソリのような尾と毒針
非常に速い走行能力

サソリのような尾は毒針を持ち、相手を刺したり、槍のように発射したりできると伝えられています。また、人間を好んで食べると言われています。

図像学

中世ヨーロッパでは、マンティコアは動物寓意集（ベスティアリ）にも記載され、悪魔の象徴とされていました。多くの図像では、鬣の深い、長髭のマンティコアがフリギア帽をかぶった姿で描かれています。体色は赤や茶色が多いですが、青色に彩色された例や、頭部が女性で胴が青い例も存在します。

尾はサソリ状ではなく、ネコ類の長い尻尾として描かれることもあります。しかし、ハーレー3244写本のように、先端に棘がついた尾として描かれることもあります。

名称の由来

マンティコア（manticore）は英名で、ラテン語名 manticōraの音写です。原典では古代ギリシャ語でμαρτιχόρας（martikhórās）と表記され、クテシアスはこれがペルシア語で「人喰う者」を意味する語の音写だと説明しています。

現代の辞書では、原名は古代ペルシア語の「マルティヤ クヴァーラ」（人喰う者）であったと復元されています。現代ペルシア語では「マルド＝ハル」といいます。

大衆文化への影響

マンティコアは、ファンタジー作品にも登場し、その恐ろしい姿で人々に畏怖の念を抱かせています。

エマーソン・レイク・アンド・パーマー (ELP): 組曲「タルカス」で、タルカスの対戦相手としてマンティコアが登場。
ダンジョンズ&ドラゴンズ (D&D): 初版から怪物として登場。蝙蝠のような翼を持つ姿で描かれることが多い。
Manticore Games Inc.: コンピューターゲーム開発企業のロゴタイプに、マンティコアが図案化されている。

まとめ

マンティコアは、古代から中世、そして現代のファンタジー作品に至るまで、長く人々に語り継がれてきた伝説の怪物です。その人面獣身の異形な姿は、人々の想像力を刺激し、様々な物語や芸術作品に影響を与え続けています。

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