マーカー発振器

マーカー発振器について

マーカー発振器は無線通信において非常に重要な役割を果たす機器です。主に無線機の受信機、送信機およびトランシーバー（無線機器）などの周波数を較正するために使用されます。これにより無線機における周波数設定の精度を向上させることができます。

概要

無線機では、表示される周波数と実際に送受信される周波数が一致しないことがあります。このズレの原因は、無線機が受ける電源の電圧変動や、水晶振動子、発振回路の経年劣化、環境温度の変化など様々です。これらの影響を受けて無線機の周波数が不正確になることが多々あります。このような状況で、マーカー発振器を使用することで、無線機が示す周波数と実際に送受信する周波数を正確に調整することが可能になります。また、無線機を自作する際、周波数ダイアルに目盛りを刻むためにも重宝されます。

仕組み

マーカー発振器の中心には基準となる水晶発振回路があります。例えば、1 MHzを基本とする水晶発振器が用意され、これにより1 MHzとその整数倍の周波数（高調波）が発振されます。具体的には、1、2、3 MHzなどが同時に出力され、これによって周波数に1 MHz単位の目盛りが付いたものさしのような役割を持ちます。

さらに、通常はこの基本周波数を分周して、より細かい周波数の電波を出力する仕組みも備えています。たとえば、1/10の分周器を接続すると、100 kHz単位の周波数が出力されます。これにより、100、200、300 kHzといったように、より細かい周波数の信号を得ることができます。この分周の比率は分周比と呼ばれ、典型的なマーカー発振器では、分周なし、1/10、1/100など、異なる設定をセレクタ・スイッチで切り替えることで利用可能です。

較正の方法

受信機の周波数の較正

受信機を較正する際には、まずマーカー発振器を稼働させ、受信機の周波数ダイアルを回します。この時、マーカー発振器が出力する周波数と受信機の表示が一致しない場合、受信機の周波数目盛りを調整することで正しい周波数に合わせます。

送信機の周波数の較正

送信機の較正も同様に行います。まずは受信機でマーカー発振器からの電波（例：7.000 MHz）を受信し、送信機の周波数ダイアルをそれに合わせて電波を送信します。この時、送信機の周波数と受信機の周波数が一致していないとビート音が発生します。ビート音の周波数は両者の周波数の差であり、ひとつに合わせることで完全な一致（ゼロビート）が得られます。この状態で送信機の周波数目盛りを調整すれば、送信機の較正は完了します。

マーカー発振器自身の較正

マーカー発振器を使用する際は、その都度較正を行うことが推奨されます。電源電圧の変動や、内部の水晶振動子・水晶発振回路の経年劣化により、出力される周波数が微妙にずれる可能性があるためです。この較正は、受信機で正確な標準電波を受信した後に、マーカー発振器がその周波数を出力するよう調整することで行います。ビート音を利用して微調整し、最終的にゼロビートの状態に達すれば、マーカー発振器の較正が完了します。

参考資料

• - 高橋靖浩『マーカー発振器の製作』 CQ ham radio 編集部 編、CQ出版、1984年。

これらのプロセスを通じて、マーカー発振器は無線通信の信号品質を保つために欠かせない器具であることがわかります。

もう一度検索