マーガレット・バーク＝ホワイト

マーガレット・バーク＝ホワイト：20世紀を代表する女性フォトジャーナリスト

マーガレット・バーク＝ホワイト（1904年 6月14日 - 1971年 8月27日）は、アメリカ合衆国の著名な写真家であり、20世紀を代表するフォトジャーナリストの一人として広く知られています。彼女は建築写真で成功を収めた後、女性として初めて戦場カメラマンとなり、第二次世界大戦中のヨーロッパで連合軍に密着取材を行い、数々の衝撃的なスクープ写真を世に送り出しました。戦後もパキスタン独立や朝鮮戦争など、世界各地で歴史的瞬間を記録し続けました。

幼少期と教育

ニューヨーク市に生まれたバーク＝ホワイトは、発明家の父と活発な女性だった母の影響を受け、幼い頃から写真に親しみます。母親から贈られた中古カメラが、彼女の写真家としての道を拓く最初のきっかけとなりました。高校卒業後、複数の大学を転々とする中で、写真技術教育の第一人者であるクラレンス・H・ホワイトに師事し、在学中は撮影した写真を雑誌社に売ることで学費を賄うほどの写真技術を習得しました。大学卒業後、フリーの写真家としてキャリアをスタートさせました。

建築・工業写真家としての成功

1927年に大学を卒業したバーク＝ホワイトは、クリーブランドに移り住み、フリーランスの写真家として活動を開始します。当時まだ注目されていなかった建築や工業写真の分野で、斬新な視点と技術で数々の作品を発表し、高い評価を得ました。その才能は、『TIME』誌の編集者ヘンリー・ルースの目に留まり、1929年に創刊されたビジネス誌『フォーチュン』の専属写真家として抜擢されます。『フォーチュン』創刊号の表紙も、彼女の撮影によるものです。

その後、彼女はアメリカ、カナダ、ヨーロッパの企業や工場を取材し、1930年にはソビエト連邦を訪れ、五か年計画における工業化の様子を外国人として初めて写真に収めました。この取材を基にした写真集『ロシアへのまなざし』と『ニューヨーク・タイムズ』紙への現地報告記事は大きな反響を呼び、写真ジャーナリストとしての地位を確立する転機となりました。

大恐慌とニューディール政策

1930年代の大恐慌の時代には、作家アースキン・コールドウェルと協力し、アメリカ南部の貧困に苦しむ小作農民の暮らしを記録した写真集『You Have Seen Their Faces』を発表。社会問題を鋭く捉えたこの作品は、高く評価され、社会改革への強いメッセージを発信しました。二人の協力関係は、結婚・離婚という形にも発展しました。この頃には、ヘンリー・ルースが創刊したばかりの雑誌『ライフ』の専属写真家にも選ばれ、ニューディール政策の一環として建設されたフォートペック・ダムの建設現場などを取材。その写真は『ライフ』創刊号の表紙を飾りました。

ここでバーク＝ホワイトが実践した「カメラとペンを用いた総合的な取材と発表」という「フォトエッセイ」の手法は、アメリカの雑誌ジャーナリズムに大きな影響を与え、多くの人々が模倣するようになりました。

戦場カメラマンとしての活躍

第二次世界大戦が始まると、バーク＝ホワイトはアメリカを代表する戦場カメラマンとなりました。1941年6月、ドイツ軍がソ連に侵攻した際、彼女は現地に居合わせ、モスクワ爆撃を撮影した唯一の外国人写真家となりました。空爆の危険を顧みず、アメリカ大使館の屋上から撮影を行った彼女の勇気と決断は、高く評価されています。

その後、女性として初めて戦場カメラマンとしてイタリアや北アフリカに派遣され、『ライフ』誌を通じて、彼女の戦場での写真はアメリカ国民に広く知れ渡ることとなりました。Uボートからの魚雷攻撃を捉えた写真など、数々のスクープ写真を撮影しました。また、パットン将軍の第三軍に同行して撮影した強制収容所の悲惨な状況を写した写真は、彼女の代表作の一つとされています。

戦後と晩年

終戦後も、バーク＝ホワイトはパキスタン独立、南アフリカの炭鉱労働者の過酷な労働環境など、世界各地で取材を続けました。インドではガンジーの非暴力運動を取材し、貴重な写真を残しています。しかし、1952年の朝鮮戦争取材中に体調を崩し、パーキンソン病を発症。手術を試みるも完治せず、戦場カメラマンとしての活動は終焉を迎えました。晩年は自伝の執筆や講演活動を行いながら、断続的に撮影を続け、数々の賞を受賞しました。1971年 8月27日、パーキンソン病の悪化により、67歳でこの世を去りました。

代表的な作品と展示

バーク＝ホワイトの作品は、ロックフェラー・センターRCAビルの写真壁画など、様々な場所で展示されました。彼女の代表的な作品は、オハイオ川の洪水で救援物資の配給に並ぶ避難民の姿を捉えた写真などがあります。日本でも、「マーガレット・バーク＝ホワイト展」が開催され、多くの人が彼女の作品に触れる機会を得ました。

彼女の生涯は、激動の20世紀の歴史と深く結びついており、その写真は時代を反映するだけでなく、未来への貴重な記録として、現在も人々に感動を与え続けています。

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