マーズワン

マーズワン：人類初の火星永住を目指す挑戦

マーズワン（Mars One）は、オランダの実業家バス・ランスドルプ氏が率いる、人類初の火星永住を目指す民間組織です。2012年に計画が発表され、2025年までに最初の宇宙飛行士4人を火星に送り込むことを目標としていました。しかし、その後スケジュールは変更され、2031年に最初の入植者が到着する予定となっています。

組織と構成

マーズワンは、非営利団体のMars One Foundationと営利企業のMars One Venturesの二つの組織で構成されていました。ノーベル物理学賞受賞者のヘーラルト・トホーフト氏もアンバサダーとして参加していましたが、Mars One Venturesは2019年に破産しました。

移住計画と候補者選抜

2013年には移住希望者を募り、約20万人の応募者の中から日本人10人を含む1058人の候補者が選ばれました。最終的に24人に絞り、最初の4人を火星に送り、その後は2年ごとに4人ずつ増員する計画でした。しかし、火星からの帰還は現在の技術では困難なため、移住者は火星に永住することになります。2015年には、男女各50人の100人に候補者が絞られました。

資金調達と計画の修正

資金源は寄付金と、訓練や移住の様子を放送するリアリティ番組の放映権料でした。最初の4人の火星移住には約60億ドルの費用を見込んでいました。当初、2018年に無人探査機を打ち上げ、2025年に最初の有人ミッションを予定していましたが、2015年のロードマップでは無人探査機は2026年、最初の入植者は2031年と修正されています。

技術協力と課題

無人火星探査機の開発実績があるロッキード・マーティン社と提携し、ランチャーにはスペースX社のファルコンヘビーが候補に挙がっていました。宇宙船の供給にはタレス・アレーニア・スペース社が候補とされていました。

火星への着陸は、薄い大気のためパラシュートが使えず、月面着陸で使用された逆噴射方式が用いられると予想されています。

計画に対する批判

マーズワンは、技術的、財源的な問題から実現の困難さが指摘されています。国際宇宙大学のクリス・ウェルチ氏は、計画に見合う財源がないと指摘し、米国のdiscovery newsも、60億ドルでの成功は「ほとんど不可能」と断言しています。

また、「片道切符」方式の人道的問題や、放射線被曝による健康問題も指摘されています。アメリカ航空宇宙局（NASA）の試算では、有人火星飛行には莫大な費用がかかり、「マーズ・ダイレクト」計画でも巨額の費用が見積もられています。会津大学准教授の寺薗淳也氏は、ロケット発射の責任主体や、人道上の問題点を指摘しています。

さらに、アラブ首長国連邦の宗教機関は、火星への移住を自殺行為とみなし、イスラム教徒に禁ずるファトワーを出しました。

2015年には、火星移住候補者が選考プロセスの実情を暴露し、詐欺であると告発しています。BuzzFeedも、マーズワンが航空宇宙企業と具体的な連携を持たないと指摘しています。

「片道切符」方式の是非

火星へ人間を送るだけで地球に帰還する手段がないことは、非人道的であるとの批判もあります。しかし、ローレンス・クラウス氏は、現代の技術では火星への帰還が極めて困難であり、「片道切符」方式の植民地化しか現実的ではないと主張しています。また、往復航行にかかる莫大なコストは、「片道切符」で解決できると述べています。歴史を振り返ると、欧州からアメリカ大陸への移民も「片道切符」であったとし、この挑戦に命をかける志願者はいるはずだと主張しています。

火星での物資確保

火星での水、食料、燃料の確保も課題ですが、地球から輸送するコストは、人間を帰還させるよりもはるかに安価であると予想されています。無人機での輸送ならば、放射線防御壁や居住空間が不要なため、コストを抑えることができます。

まとめ

マーズワンは、多くの課題を抱えながらも、人類初の火星永住という壮大な目標を掲げたプロジェクトです。計画の実現には困難が伴いますが、その挑戦は人類の未来を切り開く可能性を秘めていると言えるでしょう。

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