マーチ・871

マーチ・871 (March 871)

マーチ・871は、1987年のF1世界選手権において、マーチ・レーシングチームが投入したフォーミュラ1カーで、ドライバーは1986年の国際F3000選手権チャンピオンであるイヴァン・カペリが務めました。この車両はコスワースDFZエンジンを搭載しており、チームの成績や技術的な進展に寄与しました。

背景と支援

1987年にF1に復帰したマーチは、ドライバーにイヴァン・カペリを起用し、チームマネージャーにはイアン・フィリップスを任命しました。この二人は前年に日本のF2で経験を積んでおり、その関係を通じて日本の不動産会社であるレイトンハウスの社長、赤城明がメインスポンサーに就く運びとなりました。これにより、マーチは資金的な支援を得て、シーズンを戦うことが可能になりました。

1987年シーズンの概要

871の完成が開幕戦であるブラジルGPに間に合わなかったため、まずはF3000車両の87Pを使用してレースをこなしました。871は第2戦のサンマリノGPでようやく完成し、発表会が行われました。この時点で87Pは予備車両としてチームに留まることになります。871にはハイニ・マーダーチューンによるDFZエンジンが搭載されましたが、トラブルが頻発したため、シーズン中盤の第11戦からはブライアン・ハートチューンのDFZに切り替えることが決定しました。このエンジンの変更は、安定性向上を目指すものでした。

サンマリノGPではDFLエンジンをテストするなど、特にエンジンに関する課題が続きました。第3戦のベルギーGPでは922のエンジンが壊れ、カペリはスペアカーの87Pでレースに出場しましたが、こちらもエンジンのトラブルでリタイアすることに。第4戦モナコGP前には871-2が完成するものの、まだDFZエンジンが不足しており、こちらにもDFLエンジンが搭載されることとなりました。

エイドリアン・ニューウェイの加入

第9戦に向け、アメリカCART選手権で多くの実績を持つエイドリアン・ニューウェイがチームに加わりました。彼の参加により、871のシャシーデザインやエアロダイナミクスが大幅に改善され、予選の順位も向上し始めることになります。

シーズン終盤である第12戦ポルトガルGPにおいて、ニューシャシー「871-03」が完成し、第15戦日本GPではレースカーとして投入されました。最終戦のオーストラリアGPでは、シャシーが良好な871-2が選ばれましたが、その決勝ではカペリがスピンしてしまい、残念ながらポイント獲得には至りませんでした。

シーズンの評価と影響

871はモナコGPで6位に入賞し、1ポイントを獲得しました。カペリは「コーリン・チャップマン・トロフィー」において38ポイントを獲得し、ランキング4位となりました。この年のシーズンは、オーナーの赤城明が振り返ると、「ドタバタ」だったと語っており、多くの課題に直面しながらも成長を遂げた様子が窺えます。

余談

同年、日本のF3000でレイトンハウスのスポンサーを受けた星野一義が満足な成績を残せなかったことから、871のモノコックを利用する提案が存在しましたが、結局は別の車両に乗り換えたため、その話は立ち消えとなりました。星野はその後、1987年の全日本タイトルを手に入れることになります。

結論

マーチ・871は1987年のF1シーズンにおいて試行錯誤の中ながらも重要な役割を果たし、多くのエンジニア技術やチームの戦略が築かれました。その成績や経験は、今後のレーシングチームにとって貴重な財産となったことでしょう。

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