マームズベリのウィリアム

マームズベリのウィリアム

ウィリアム・マームズベリ（1095年？－1143年）は、中世イングランドにおける重要な歴史家であり、ベネディクト会の修道士として活躍しました。彼はノルマン人とアングロ・サクソン人の混血として生まれ、若い頃からイングランド南西部に位置するマームズベリ修道院で学びを深めました。

修道院では、彼は図書館の司書としての役割も担い、多くの書物に触れる機会がありました。彼の学問は、地元の歴史にとどまらず、広くイングランド全体に及び、様々な地域を旅する中で得た知識をもとに多くの歴史書を執筆しました。特に、彼の代表作には『歴代イングランド王の事績』（Gesta Regum Anglorum）と『イングランド司教たちの事績』（Gesta Pontificum Anglorum）があり、これらは1125年頃までに執筆されました。

さらに、彼は1125年から1142年にかけて同時代の出来事を詳細に記録した『現代史』（Historia Novella）を著しました。これらの著作は、当時のイングランドの歴史を理解するうえで欠かせない資料となっています。

ウィリアムは、自らをベーダ（聖ベーダ）に次ぐ存在だと考えていました。ベーダは英語圏の初期の歴史家として広く認識されていますが、ウィリアムはその後継者として、文献資料の収集・選別、地域名や記念物など文献に依存しない情報収集、また合理的な歴史解釈への強い関心を示しました。彼の執筆スタイルは、中立的な視点を大切にし、ノルマン人とアングロ・サクソン人の双方に対して公平な態度を保つことを目指しました。

その結果、ウィリアムの著作は今なお高く評価されており、後世の歴史家たちにも影響を与えています。彼の歴史書は、単なる史実の羅列ではなく、歴史の解釈を重視したものであり、当時の社会情勢や文化を反映した深みのある内容となっています。ウィリアムは、精緻な歴史書を通じて、イングランドの過去を後世に伝える重要な役割を果たしました。

参考文献

• - 有光秀行「ウィリアム (マームズベリの)」『歴史学事典 5 歴史家とその作品』 （弘文堂、1997年） ISBN 978-4-335-21035-8

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