マーラ

マーラ

マーラ（Māra）は、仏教において釈迦が悟りを開く瞬間に現れたとされる悪[[魔]]です。瞑想を妨げ、悟りの達成を阻止しようとする存在として描かれています。愛の神カーマと結び付けられ、カーママーラとしても知られています。仏教では、マーラの誘惑に打ち勝つこと、すなわち降魔が重要な修行とされています。

経緯

マーラは煩悩の化身であり、釈迦が悟りを開くことは自身の破滅につながると考えました。そのため、まず美しい娘たちを釈迦のもとに送り込み誘惑を試みましたが、釈迦は動じませんでした。次に、恐ろしい怪物たちを差し向けましたが、これも失敗に終わりました。岩石や武器を降らせ、暗闇で周囲を覆っても釈迦は瞑想を続けました。最後に、マーラは巨大な円盤を振りかざして挑みましたが、円盤は花輪に変わり、マーラは敗北を認めました。この出来事を通じて釈迦は悟りを開いたとされています。

魔王マーラ・パーピーヤス（Māra Pāpīyās）は、「殺すもの」または「死」の人格化と解釈され、「より以上悪いもの」を意味するパーピーヤスを伴い、天魔とも呼ばれます。仏伝には天（deva、神）としての記述もあり、インドにおける肌の黒い被支配者が崇拝した神々が起源とする説もあります。摩と書かれていたのを梁の武帝蕭衍が、魔に改めたとされています。マーラと外教徒を合わせて悪[[魔]]外道と呼ぶこともあります。

日本では、マーラが釈迦の修行を邪魔した故事から、修行僧たちが煩悩の象徴として男根を「魔羅（まら）」と呼ぶようになりました。現在では、この言葉は一般社会でも隠語として使用されています。

五魔

五魔（pañca mārā; パンチャ・マーラ）は、人間の精神を惑わす五つの要素を表します。

五蘊魔（khandha māra; カンダ・マーラ）: 肉体と精神を構成する五つの要素（五蘊）がもたらす苦悩。
業魔（abhisaṅkhāra māra; アビサンカーラ・マーラ）: 過去の行い（業）がもたらす心の動揺や執着。
死魔（maccu māra; マッチュ・マーラ）: 死への恐怖や不安。
天魔（devaputta māra; デーワプッタ・マーラ）: 欲望や快楽に心を奪われること。
煩悩魔（kilesa māra; キレーサ・マーラ）: 怒り、貪り、嫉妬などの煩悩。

仏典の記載

マーラに関する記述は、原始仏典である阿含経の『相応部』「悪[[魔]]相応」（Māra samyutta）に見られます。

三人の娘

パーリ[[仏典]]相応部4-25の魔娘経では、マーラは渇愛（Taṇhā）、不喜（Arati）、貪（Rāga）の三人娘に姿を変えて釈迦を誘惑しようとしたと記述されています。しかし、釈迦は彼女らの誘惑に屈しませんでした。

脚注

参考文献：『新釈尊伝』渡辺照宏（1965年）

関連項目

他化自在天
魔
魔縁
波旬
* ギリメカラ

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