ミイラの幽霊

古典的ホラーの傑作『ミイラの幽霊』：ハマー・フィルムと黄金コンビの共演

1959年、イギリスのハマー・フィルム・プロダクションによって製作されたホラー映画『ミイラの幽霊』（原題：The Mummy）は、戦後におけるミイラ映画の代表作として高い評価を受けています。近年では『ミイラ再生』のリブート作品として言及されることも多く、その高い人気と影響力の大きさを示しています。

本作は、ホラー映画史に名を刻む名優、ピーター・カッシングとクリストファー・リーという黄金コンビの共演が実現した作品としても注目に値します。二人の絶妙な演技は、物語に深みと緊張感を与え、観客を魅了しました。監督はテレンス・フィッシャーが務め、『フランケンシュタインの逆襲』（1957年）、『吸血鬼ドラキュラ』（1958年）といったハマー・フィルムの代表作に続く、本格古典派ホラーの第3弾として制作されました。

ストーリーは、19世紀末のエジプトを舞台に、遺跡発掘に携わる考古学者ジョン・バニング（ピーター・カッシング）が、アナンカ姫のミイラを発掘するところから始まります。しかし、このミイラには恐るべき秘密が隠されており、イギリスへ持ち帰ったことで、古代の高僧カーリス（クリストファー・リー）が復活するという事態を引き起こします。エジプト人メヘメットの助力によって蘇ったカーリスは、バニングたちを執拗に追いかけ、恐怖の連鎖が始まります。

本作は、ユニバーサル映画による名作『ミイラ再生』（1932年）を意識したリメイク作品でありながら、1940年代に製作されたユニバーサル版ミイラシリーズの要素も取り入れています。そのため、『ミイラ再生』のミイラ男イムホテップとは異なり、本作では1940年代シリーズに登場するカーリスをミイラ男として採用し、最後までミイラ姿のままという点で1940年代シリーズとの共通性を持ちます。また、カッシングとリーによる演技も、ハマー・フィルムおなじみのパターン、カッシング＝科学者、リー＝怪物という配役で、それぞれのキャラクターが際立っています。特に、リーの長身を生かしたミイラ男の迫力は、戦後におけるミイラ映画の新たな金字塔として高く評価されています。

『ミイラの幽霊』は、ハマー・フィルムの黄金期を象徴する作品であり、古典的なホラー映画の魅力と、現代的な演出が見事に融合した傑作と言えるでしょう。日本でも劇場公開され、高い人気を博した本作は、長らくソフト化されていませんでしたが、2015年にはブルーレイディスク化され、改めてその魅力を再確認できるようになりました。現在でも多くのホラーファンを魅了し続けている作品です。

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