ハマー・フィルム・プロダクション

ハマー・フィルム・プロダクションズ：戦後イギリスを代表するホラー映画制作会社

ハマー・フィルム・プロダクションズは、1948年に設立されたイギリスの映画制作会社です。1950年代後半から1970年代前半にかけて、ピーター・カッシングとクリストファー・リーという二大スターを起用した古典ホラー映画を数多く制作し、世界的な人気を博しました。フランケンシュタインやドラキュラといった、後のホラー映画にも大きな影響を与えた作品群は、現在でも高い評価を得ています。

ハマー社の歴史は、1949年の『ドクター・モレル／消えた相続人』という作品に始まります。その後、着実な活動を続け、1955年にはSFホラー映画『原子人間』を大ヒットさせ、配給会社から古典ホラー映画のリメイクを依頼されます。

転機となったのは、1957年の『フランケンシュタインの逆襲』です。ワーナー・ブラザースの出資を受け、ユニバーサル映画の『フランケンシュタイン』をカラーでリメイクしたこの作品は、当初は過剰な残酷描写や怪物のデザインを巡って批判を受けましたが、公開されると大ヒットを記録します。ピーター・カッシングがフランケンシュタイン男爵、クリストファー・リーが怪物を演じたこの作品は、ハマー社のホラー映画黄金時代を象徴する作品となりました。

続く『吸血鬼ドラキュラ』（1958年）でも、カッシングとリーはヴァン・ヘルシングとドラキュラ伯爵として再び共演。前作を上回る成功を収め、ハマー社はホラー映画界のトップランナーとしての地位を確立しました。この2作品を皮切りに、ハマー社はフランケンシュタインとドラキュラのシリーズ化を進めるとともに、ミイラ男、狼男、ゴーゴン、オペラ座の怪人、ブードゥー・ゾンビといった古典的なホラーの題材を次々と映画化。SF、ファンタジー、サスペンス、ミステリーなど、ホラー以外のジャンルにも積極的に進出していきました。

しかし、1970年代に入ると、より過激なホラー映画が台頭し、ハマー社の古典的なスタイルは時代遅れとなり始めます。低迷を脱しようと、セクシーな女吸血鬼映画『バンパイア・ラヴァーズ』、現代を舞台にしたドラキュラ映画『ドラキュラ'72』、香港のショウ・ブラザーズとの合作によるカンフー・ホラー映画『ドラゴンvs7人の吸血鬼』など、様々な試みが行われました。日本の東宝との合作も企画されましたが、実現には至りませんでした。

残念ながら、これらの試みは成功せず、ハマー・フィルム・プロダクションズは1970年代半ばには事実上映画製作を終了することとなります。しかし、ハマー社が制作したホラー映画は、その独特の雰囲気と、カッシングとリーの素晴らしい演技によって、現在でも世界中のホラー映画ファンから高く評価されており、映画史に大きな足跡を残しました。彼らの作品は、後のホラー映画に多大な影響を与え、ホラー映画の黄金時代を築き上げた存在として記憶されています。

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