ミカエル・タリヴェルディエフ

ミカエル・タリヴェルディエフ

ソビエト連邦を代表する作曲家の一人、ミカエル・タリヴェルディエフ（Mikael Tariverdiev, 1931年8月15日 - 1996年6月24日）は、その生涯を通じて、特に映画音楽の分野で多大な功績を残しました。

彼はグルジア（現在のジョージア）の首都トビリシでアルメニア人の両親のもとに生まれ、その後ロシアで育ちました。音楽の道に進み、モスクワにある名門グネーシン音楽大学で、著名な作曲家アラム・ハチャトゥリアンの指導を受けました。この時期に培われた才能が、後の幅広い音楽活動の基盤となります。

タリヴェルディエフの創作活動は多岐にわたり、100曲を超えるロシア語の歌曲や、2つのオペラ（その一つに喜歌劇『カリオストロ公爵』がある）を手がけました。しかし、彼が最も広く知られることとなったのは、ソビエト連邦時代の数々の人気映画に提供した音楽によるものです。彼のメロディは、映画の映像と深く結びつき、多くの人々の心に刻まれました。彼はソビエト映画音楽作曲家同盟の設立時から総裁を務め、この分野におけるリーダーシップを発揮しました。

その功績は国内外で高く評価されました。1977年にはソビエト連邦国家賞を受賞し、1986年にはロシア人民芸術家の称号が授与されました。さらに、1975年にはアメリカ音楽アカデミーから、1978年には日本のビクターからも賞を贈られています。1990年代には、ロシア最大の国営映画祭である「キノタウル」において、最も優れた作曲家を表彰する「ニカ賞最優秀作曲家部門」に3回も選出される栄誉に輝きました。

彼の代表的な作品として、映画・ドラマ音楽では、スパイ・アクションの傑作として名高い『春の十七の瞬間』（1973年）や、ソ連で絶大な人気を誇る新年の定番コメディ『運命の皮肉、あるいはいい湯を』（1975年）の音楽が挙げられます。これらの作品は、彼の作曲家としての才能を広く知らしめることとなりました。芸術音楽の分野では、オペラ『カリオストロ公爵』や、チェルノブイリ原子力発電所事故に触発されたオルガン交響曲なども重要な作品です。

タリヴェルディエフの遺した功績は、彼が亡くなった後も様々な形で受け継がれています。ロシア最大の国営映画祭「キノタウル」の最優秀音楽賞は、「タリヴェルディエフ賞」と名付けられ、彼の名を冠して後進の育成と顕彰が続けられています。また、彼の音楽を支持する人々が集まり、「ミカエル・タリヴェルディエフ慈善基金」が設立され、彼の作品の普及や若手音楽家の支援を行っています。さらに、「タリヴェルディエフ国際オルガンコンクール」も開催され、国際的な文化交流とオルガン音楽の発展に寄与しています。

ミカエル・タリヴェルディエフは、ソビエト映画音楽の黄金時代を築き上げた作曲家であり、そのメロディは今なお多くの人々に愛され続けています。彼の音楽は、単なる背景音楽にとどまらず、映像作品の感情や物語性を深める上で不可欠な要素となりました。その影響力は、後の世代の作曲家や映画製作者にも及んでいます。彼の名前は、ロシア及び世界の音楽史に確固たる地位を占めています。

参考情報として、公式サイト (Tariverdiev.Ru)、Lib.ruの関連ページ (Tariverdiev at Lib.ru)、IMDbのプロフィール (Mikael Tariverdiev - IMDb) などが挙げられます。

もう一度検索