ミクロコスモス (バルトーク)

ミクロコスモス

『ミクロコスモス』（ドイツ語：Mikrokosmos, ハンガリー語：Mikrokozmosz、Sz. 107, BB 105）は、著名な作曲家バルトーク・ベーラによって1926年から1939年にかけて作られた、ピアノのための練習曲集です。この作品は全6巻、合計153曲から構成されており、ピアノ学習者のための教材として設計されています。各巻の難易度は段階的に上昇していくため、初心者から上級者まで幅広いレベルに対応しているのが特徴です。

作曲の背景

バルトークは1940年にアメリカに亡命する直前、ハンガリーの全国紙『マジャル・ネムゼト』のインタビューで『ミクロコスモス』の誕生背景を語っています。この曲集は、初心者向けの教則本を制作する過程で、1926年に発表された『9つのピアノ小品』から除外された曲（81番）を含む計画として発表されました。その目的は、シンプルな楽曲を一本にまとめることで、教師からの強い要望に応えることでもありました。

1932年から作曲を開始し、この年だけで40曲、翌年にもさらに40曲を制作したとされています。また、1938年までに更に20曲が完成し、合計で100曲が仕上がることとなります。バルトークは、次男のペーテルがピアノを習い始めたことを機に、これらの曲を実際に試してもらう良い機会だと感じたと回顧しています。この経験は、バルトーク自身の作曲活動にも大いに役立ったと彼は述べています。教育的意図が強く表れている一方で、難易度の高い曲も含まれていることから、単なる教育用の枠を越え、バルトークの音楽語法を理解するための重要な資料とも見なされています。

特徴と内容

『ミクロコスモス』は、演奏時間が約1分から2分程度の短い作品が多く見られ、様々な性格の曲が集まっています。バルトークは、序盤は移動を伴わない左右同一の動きを練習するよう指導していますが、旋律と伴奏という固定された形式は少なく、むしろ対位法的な技術が多く用いられています。また、音階練習は含まれておらず、音楽教師に任されるべきものであると注釈がつけられています。

バルトーク自身がピアノ教育に強い関心を持っていたこともあり、他にも子供向けのピアノ曲集として『子供のために』や、教則本『バルトーク＝レショフスキー・ピアノ教本』がありますが、『ミクロコスモス』はより幅広い現代音楽への導入として評価されています。民族音楽的要素も残しつつ、バッハやシューマンを模倣した作品、複数の旋法を取り入れた曲や無調的なもの、複雑なリズムが導入された作品など多彩です。

構成

この曲集は第1巻から第6巻まであり、それぞれ次のように構成されています：

• - 第1巻 (1-36) 初級
• - 第2巻 (37-66) 初級
• - 第3巻 (67-96) 中級
• - 第4巻 (97-121) 中級
• - 第5巻 (122-139) 上級
• - 第6巻 (140-153) 上級

各巻は初心者に適した曲で始まりますが、徐々に難易度が上がり、第6巻になると特に難解な作品が現れるようになります。中でも148番以降の曲、『ブルガリアのリズムによる6つの舞曲』は、バルトーク自身が最後に演奏した曲として有名です。さらに、3巻から6巻までのうち7曲は、バルトークがディッタ夫人と共演するために2台ピアノ用に編曲されたバージョンも存在します。

まとめ

『ミクロコスモス』は、単なる練習用のピアノ曲集にとどまらず、教育的意義や音楽的表現の豊かさが評価される作品です。これを通じて現代音楽の理解が深まるだけでなく、バルトークの独特な音楽世界に触れることができる、貴重な資料です。

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