ミシェル・サデラン

ミシェル・サデラン

ミシェル・サデラン（Michel Sadelain）氏は、1960年4月21日にフランスで生まれた、著名な免疫学者です。現在はコロンビア大学の教授として研究活動を行っており、特にがん免疫療法分野におけるCAR-T細胞療法の臨床応用技術開発の先駆者として、世界的にその名を知られています。

略歴

サデラン氏の人生は、幼少期から波乱に富んでいました。ポーランド人の父とカナダ人の母を持つ彼は、政治難民としてフランスのパリで生を受けました。この背景は、後の彼の研究活動やキャリアパスにも影響を与えた可能性があります。

教育はまず母国フランスで積まれ、1984年にパリ第6大学で医学の学位（MD）を取得しました。その後、研究の道を志してカナダへ移り、アルバータ大学に進学。1989年には免疫学分野で博士号（Ph.D.）を取得しました。カナダでの博士課程は、彼の免疫学研究者としての基盤を築く重要な期間となりました。

博士号取得後、彼はアメリカ合衆国へ渡り、マサチューセッツ工科大学（MIT）内にあるホワイトヘッド研究所で博士研究員として研鑽を積みました。ここで最先端の研究環境に触れ、自身の研究テーマを深めていったと考えられます。

1994年からは、ニューヨークにある著名な研究機関であるメモリアル・スローン・ケタリング・がんセンター（MSK）に所属しました。MSKでは、がん研究の中心的な役割を担い、特に遺伝子改変T細胞を用いたがん治療法の開発に深く関わることになります。彼の研究は、患者自身のT細胞にキメラ抗原受容体（CAR）を導入することで、がん細胞を特異的に認識・攻撃させる「CAR-T細胞療法」の臨床応用を現実のものとする上で、極めて重要な貢献をしました。彼はMSKで長年にわたり、この画期的な治療法の基礎研究から臨床開発に至るまでを牽引しました。

2024年からは、活躍の場をコロンビア大学に移し、同大学の教授として引き続きがん免疫療法の最前線で研究を続けています。MSKでの実績に基づき、コロンビア大学でもCAR-T細胞療法をはじめとする細胞療法研究を推進していくと期待されています。

主な業績

ミシェル・サデラン氏の最も大きな業績は、CAR-T細胞療法の臨床応用技術の開発における貢献です。彼は、T細胞に遺伝子操作を施し、特定のがん細胞表面の抗原を認識するように設計されたCARを導入する技術を確立・改良しました。この技術により、従来の治療法では効果が見られにくかった一部の血液がん（白血病やリンパ腫など）に対して、劇的な効果を示す治療法が誕生しました。

彼の研究チームは、CAR-T細胞の有効性、持続性、安全性を高めるための様々な技術改良に取り組みました。これにより、CAR-T細胞療法は研究段階から、実際に患者に提供される治療法へと大きく進展しました。彼の業績は、免疫細胞を「生きた薬」として利用する細胞療法の可能性を広げ、難治性がんに対する新たな治療選択肢を提供することに大きく貢献しています。

受賞

ミシェル・サデラン氏は、その革新的な研究成果に対して、国内外から数多くの権威ある賞を授与されています。以下はその一部です。

2012年 - ウィリアム・コーリー賞
2018年 - パサノ賞
2019年 - ガベイ賞、レオポルド・グリフエル賞
2023年 - クラリベイト引用栄誉賞
2024年 - 生命科学ブレイクスルー賞、ガードナー国際賞、ウォーレン・アルパート財団賞
2025年 - キング・ファイサル国際賞、マイエンブルク賞

これらの受賞歴は、彼の研究が科学界や医学界に与えた影響の大きさと、CAR-T細胞療法の分野における彼の貢献がいかに高く評価されているかを示しています。サデラン氏の研究は、今後もがん治療の未来を切り拓いていくと期待されています。

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