1980年に公開された『ミスター
どん兵衛』は、日本の
映画界において注目すべき作品です。この
映画は、
映画通を自認する
山城新伍の初監督作品であり、彼が企画、製作、監督、脚本を手掛け、主演も務めました。そのタイトルは、山城と
川谷拓三が出演した
日清食品のカップ麺「
どん兵衛」に由来しています。山城は当時、
映画歴21年を誇る人物であり、自己の経験や知識を基に、
映画の現場を丹念に描くことを目指しました。
ストーリーの背景
本作は、
B級映画監督とその助監督たちを中心に、
映画制作の裏側や職人としての姿勢をコミカルに捉えています。特に、
映画界の潮流に対するシニカルな視点が光ります。
映画の内容には、当時の
映画界の热点であった『影武者』の
パロディが盛り込まれ、観客に楽しさを提供しています。音楽は
五木ひろしが担当し、初めての
映画音楽作品となりました。
主要スタッフとキャスト
本作の監督、企画、製作、脚本を務める
山城新伍の他には、
内藤誠や
梶間俊一が共同脚本を担当しました。音楽監督には
五木ひろし、
撮影は中島芳男、美術は
今村力が手掛けました。キャストには、助監督役の
川谷拓三をはじめ、長谷直美、
住吉正博、
梅宮辰夫、片桐夕子など、実力派の俳優が揃い、
映画に厚みを与えています。
制作の経緯と資金調達
1979年、山城は
映画製作の準備を進めていましたが、資金調達が難航していました。そこで、
日清食品の
安藤百福社長に相談し、8000万円の製作費が確保される運びとなります。この金額は当初の予想よりもかなり少ないもので、日清との協力は
映画の宣伝にも大きく寄与しました。想定以上の成功を収めたカップ麺の売上も影響し、
映画業界に新風を吹き込むこととなりました。
1979年の秋にクランクインし、短期間で
撮影を終えた本作は
1980年4月に公開されました。宣伝には「サッこの世のあらゆる権威をパロッちゃえ!
ギャグっちゃえ!」という
キャッチコピーが使用され、観客の期待を高めました。封切り直前には、併映作品とともに特集として取り上げられるなど、話題を呼びました。しかし、当時の
映画界の状況は厳しく、特に大作に対抗する形での一般の
映画の受容は困難でした。
興行成績とその後
最終的に『ミスター
どん兵衛』は一定の成功を収め、その興行成績はまずまずと言われています。しかし、上映後の再上映やソフト化はされておらず、現在では幻の
映画とされています。製作元である「
どん兵衛プロダクション」は既に解散しており、権利も不明な状況です。
東映はフィルムの廃棄を行ったものの、原版が残っているため、将来的な再販や配信の可能性も残されていますが、現状では難しいとされています。
結論
『ミスター
どん兵衛』は、
映画界の舞台裏をユーモラスに描いた作品で、
映画好きにはたまらない一作です。その制作過程や公開後の行く末は、
日本映画界の興味深い歴史を物語っています。