ミステル・カカオ

日本のプロレス界において、レスラーとしてだけでなく、マスククリエーターとしても唯一無二の存在感を放つ人物、それがミステル・カカオ（本名：梅本和孝、1966年 1月29日生まれ）です。覆面・コスチューム制作会社「覆面屋工房」の代表として、多くのプロレスラーの顔となるマスクやリングコスチュームを生み出す一方、自身も覆面レスラーとしてリングに上がり、またプロモーターとして日本のルチャリブレシーンを牽引してきました。

キャリアの始まりと異分野での活躍

ミステル・カカオのプロレスへの道は、1984年に全日本プロレスに入団したことから始まります。しかし、デビューには至らず一度プロレス界を離れることとなりました。その後、大学に進学した彼は、「体を鍛え、プロレスの世界に戻る」という目標を持ってボディビルディングを開始します。

このボディビルへの取り組みは単なるトレーニングに留まらず、大学在学中に「ミスター京都ボディビル選手権」と「全日本ミックスドペア選手権」で優勝を飾るなど、輝かしい実績を残します。さらに、「ミスター日本ボディビル選手権」にも4度出場しており、プロレスとは異なる分野でも高いレベルに達していたことが分かります。

大学卒業後は、地元である京都でインストラクターとして活動。この時期には、後にプロレス界で名を馳せる小橋建太氏のパーソナルトレーナーを務めた経験も持っています。同時に、ボディビル関連のアパレルやサプリメントを取り扱う店舗に勤務しました。

マスククリエーターへの転身

店舗勤務を通じて、彼はマスク制作の世界へと導かれます。初代タイガーマスクのマスクを手がけた東京の著名な職人との繋がりができたことで、自身の勤める店でそのマスクを販売するようになります。この縁から、職人に勧められ、マスク制作そのものに興味を持ち始めます。やがて東京のマスク工房に出向き、職人の技を見よう見まねで習得することで、マスククリエーターとしての基礎を築き上げました。

1992年には、自身のマスク・コスチューム制作会社「覆面屋工房」をCACAO名義で設立。プロレスラーのニーズに応える高品質な製品は多くの選手から信頼を得て、彼のマスククリエーターとしての地位を確立しました。

プロモーターとしての挑戦

マスク制作で成功を収める一方で、ミステル・カカオのルチャリブレへの情熱は高まっていきました。彼は「本場のルチャリブレを日本に直輸入したい」という強い思いを抱き、1997年2月4日、総合プロデューサーとして前代未聞のプロジェクトを実行します。それは、メキシコのメジャープロレス団体CMLLを、文字通り「団体ごと」招聘して日本公演を行うというものでした。この試みは「CMLL JAPAN」としてKBSホールで旗揚げ戦を迎え、当時の日本のプロレス界に大きな衝撃と新しい風をもたらしました。

レスラー、そして新たな挑戦

CMLL JAPANの活動が進む中で、ミステル・カカオは自らリングに上がることを決意します。2000年 7月29日、CMLL JAPANの大会で「ミステル・カカオ」としてプロレスラーデビューを果たしました。

CMLL JAPANは2001年1月に活動を停止しますが、ミステル・カカオのプロレスへの関わりは続きます。同年7月29日には、リングネームを「マッチョ☆パンプ」と変え、みちのくプロレスの大会に参戦しています。

そして2006年8月、彼は再びプロモーターとして立ち上がります。日本のマスクマンを中心としたプロレスイベント「覆面MANIA」を設立し、同年9月22日に新木場1stRINGで旗揚げ戦を開催。現在も覆面MANIAは日本のルチャリブレ及びインディープロレスシーンにおいて独自の存在感を放っています。

また、プライベートでは、2012年 10月16日にCMLLで知り合ったバンクーバー・キャットとの結婚を発表しています。

レスラーとしてのスタイルと実績

ミステル・カカオは、ボディビルで培った肉体とルチャリブレのエッセンスを融合させたスタイルを持ちます。主な得意技には、自身のバックボーンを反映したネーミングの技が多く見られます。

マッチョバスター
マッチョボトム
マッチョクラッチ（ヨーロピアンクラッチと同型）
マッチョエルボー

入場曲は、ヴァン・マッコイの「アフリカン・シンフォニー」を使用しています。

獲得した主なタイトルは以下の通りです。

CMLL JAPANタッグ王座
CDDIタッグ王座
IWA世界ジュニアヘビー級タッグ王座
アイアンマンヘビーメタル級王座

その他の活動

多才なミステル・カカオは、メディアにも多数出演しています。

テレビ: 『モヤモヤさまぁ〜ず2』（テレビ東京）、『ちい散歩』（テレビ朝日）など。
CM: 西友のCMシリーズなど。

マスククリエーター、プロモーター、そしてプロレスラーとして、日本のプロレス界、特にルチャリブレシーンにおいて多角的に貢献し続けるミステル・カカオは、そのユニークな経歴と活動を通じて、多くのファンに愛される存在です。

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