ミス・ユニバース1972

第21回ミス・ユニバース世界大会（1972年）

第21回となるミス・ユニバース世界大会は、1972年7月29日、カリブ海の島国プエルトリコで開催されました。大会の舞台となったのは、プエルトリコ北海岸に位置する美しいリゾート地、ドラドにあるセロマービーチホテルです。世界中から選ばれた各国の美の代表たちが集結し、ミス・ユニバースの栄光のタイトルを目指して競い合いました。

この年の栄えあるミス・ユニバースのタイトルは、オーストラリア代表のケリー・アン・ウェルズ氏の頭上に輝きました。彼女の戴冠は、オーストラリアにとってはもちろんのこと、オセアニア地域全体としても初めてのミス・ユニバース誕生という歴史的な快挙でした。これにより、世界の美の基準が多様であることを改めて示す結果となりました。

しかし、この大会には一つの特別な事情がありました。前年、1971年のミス・ユニバース優勝者であるレバノンのジョルジーナ・リザーク氏は、本来であれば自らの後継者である新しいミス・ユニバースにティアラを授与するという、大会における最も感動的な役割を担うはずでした。しかし、当時の国際情勢における治安上の懸念、特にテロリストによる攻撃のおそれがあるという理由から、彼女のプエルトリコへの入国が認められませんでした。このため、前年女王から新女王へのティアラ授与という伝統的な引き継ぎの場面は実現しませんでした。

さらに、皮肉なことに、この1972年大会に出場するはずだったレバノン代表も、同様の理由により大会に参加することができませんでした。結果として、優勝したウェルズ氏への栄冠の授与は、過去の大会で活躍した二人の女性によって行われることになりました。一人は1970年のミス・ユニバースであるプエルトリコのマリソル・マラレ氏、もう一人は1971年のミス・ユニバースで第2位であったトニ・レイウォード氏（オーストラリア代表）です。

日本からは、前田晴美氏が代表として出場しました。前田氏は予選を見事に通過し、上位12名によって争われる最終選考に進出する健闘を見せました。これは日本にとって、1969年の大会から数えて4年連続となるトップ入賞という、非常に安定した成績を示すものでした。この連続入賞記録は、過去の1957年から1960年にかけて日本代表が達成した連続入賞記録に並ぶものであり、国際的な舞台における日本の代表の継続的な活躍を印象付けました。

大会では、主要なタイトルの他に、出場者の様々な側面を評価する特別賞も授与されました。この年の特別賞受賞者は以下の通りです。

ミス・アミティー：ザイール代表（オンバイ・ムクタ氏） - 出場者間の友好精神が最も優れていた代表に贈られる賞。
ミス・フォトジェニック：ベルギー代表（アンヌ＝マリー・ロジェ氏） - 最も写真写りが良いと評価された代表に贈られる賞。
* ベスト・ナショナル・コスチューム：ペルー代表（カルメン・アンプエロ氏） - 自国の文化を最もよく表現した独創的なナショナルコスチュームに贈られる賞。

これらの特別賞は、総合的な美しさだけでなく、人間性や文化的な側面、特定の才能などを称えるものであり、大会に多様な光を添えました。

第21回ミス・ユニバース世界大会は、オセアニア地域からの初優勝という歴史的な瞬間と、国際情勢が大会の進行に影響を及ぼすという異例の事態が重なった記憶に残る大会となりました。

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