ザイール

ザイール共和国の概要

ザイール共和国（République du Zaïre）は、1971年から1997年までの間に存在した国名で、現在のコンゴ民主共和国にあたります。この名称は、コンゴ川のポルトガル語名「ザイール川」に由来しています。特に、モブツ・セセ・セコが長期にわたり権力を握っていた時期の個人独裁的な政治体制が印象的です。国のスローガンは「平和、正義、労働」であり、国歌は「La Zaïroise」と呼ばれていました。

歴史

ザイール共和国は1965年のモブツによるクーデターの後に設立されました。モブツは、中央集権的な強力な政府を目指し、「ザイール化政策」を実施。植民地支配の名残を排除するため、1971年に国名を変更しました。
その後、反政府勢力の活動が続き、1978年にはシャバ戦争が発生。フランス軍が介入した戦闘の中、1970年代の軍事的緊張が高まりました。
1990年代に入り、民主化の要求が高まります。1990年には議会が複数政党制への道を開く憲法修正案を可決。しかし、モブツ大統領は権力を手放そうとせず、1996年にはルワンダ紛争が影響を及ぼし、ツチ系勢力による大規模な蜂起が起きました。これに伴い、モブツ政権は1997年に崩壊し、ローラン・カビラが新たに大統領に就任、新国名がコンゴ民主共和国へと変更されました。

政治

ザイールは一党独裁制を採っており、モブツが率いる革命人民運動（MPR）が政治の実権を握っていました。野党は非合法であり、政府に対する反対勢力は国内外で活動していました。大統領の任期は5年で、再選は原則として2期まででしたが、モブツは特殊な「特別措置」を利用して無制限に再選を続けていました。議会は「国民立法議会」として一院制を採用し、そこでの法案可決はモブツの意向と強い関連がありました。司法制度も大統領の強い影響下にあり、国家権力が集中していました。

経済

ザイールの経済は、設立当初は銅などの地下資源の開発が進み、外国投資も回復していました。しかし、1990年代の内戦が経済に深刻な影響を与え、世界最貧国の一つに陥りました。1973年頃の国内総生産は65ドルと低く、1980年には144ドルに回復しましたが、それ以降の動向は内戦によって大きな打撃を受けました。主要産品にはコーヒーやダイヤモンドなどがありますが、銅が輸出品の60%を占めていました。

行政区画と主要都市

ザイール当時、国は再編されて21州から8州1市に改編されました。主要都市には首都キンシャサや、工業地帯として知られるルブンバシがありました。

住民

1984年の国勢調査によれば、ザイールの人口は約2964万人であり、多様な民族が存在していました。約200の種族が共存しており、バントゥー系民族がその約半数を占めます。また、欧州系移民や原住民のピグミー人も見られます。

言語と宗教

フランス語が公用語とされ、他にスワヒリ語やリンガラ語、キンコンゴ語が広く話されていました。約50%の文盲率が指摘される中、カトリック教徒が主流を占め、他にもいくつかの宗教が存在していました。

渡航情報

当時の渡航はローマを経由し、ビザの取得や様々な予防接種が求められ、特に流行性疾患にも注意が必要とされていました。

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