ミツバハマゴウ

ミツバハマゴウ

ミツバハマゴウ（学名：Vitex trifolia）は、シソ科ハマゴウ属に属する、冬季に葉を落とす性質を持つ低木です。この植物は、幹が地面を這わず立ち上がって成長する特徴から、タチハマゴウという別名でも知られています。かつての分類体系であるクロンキスト体系ではクマツヅラ科に位置づけられていましたが、現在の植物分類学ではシソ科に含められています。

日本においては、環境省のレッドリストでは評価されていませんが、鹿児島県において準絶滅危惧種としてリストアップされており、その自生地の保全が重要な課題となっています。

特徴

ミツバハマゴウは、通常1メートルから最大で5メートルほどの高さにまで生長します。同じハマゴウ属のハマゴウが匍匐性であるのに対し、本種は直立する樹形をとります。葉は枝に対になってつき、一般的には3枚の小葉からなる複葉（3出複葉）ですが、小葉が1枚のみの単葉も見られます。葉の柄は1〜2センチメートルで、ハマゴウのそれと比べるとやや長めです。小葉の縁に鋸歯はなく滑らかで、先端の頂小葉は3〜8センチメートルの長さがあります。小葉の基部は細くすぼまり、個々の小葉にはほとんど柄がありません。葉には独特の強い臭気があります。

花は、枝の先端や葉の付け根にできる花序に多数集まって咲き、淡い紫色をしています。花冠はやや唇のような形をしており、春から秋にかけて比較的長い期間にわたって開花が見られます。花後に形成される果実は、直径5〜7ミリメートルほどの球形で、熟すと褐色になり、木質化します。

分布と生育環境

ミツバハマゴウは、東南アジアからオーストラリアにかけての旧世界の熱帯域に広く分布しています。日本国内では、南西諸島が主な自生地となっており、鹿児島県のトカラ列島に位置する平島や宝島は、本種の自生が確認されている最北限の地として、世界的な分布の北限にあたります。これらの地域から沖縄県の先島諸島にかけて、比較的限定的に自生が見られます。

生育する環境としては、海岸に近い場所によく見られますが、海岸の砂浜に自生するハマゴウとは異なり、波打ち際からやや離れた陸側の環境を好む傾向があります。例えば、海岸近くの低木林の林縁や、マングローブ林の陸側の境界部、あるいは川沿いなど、比較的湿り気のある場所に生育しています。

利用

その立ち上がる樹形や開花期間の長さから、ミツバハマゴウは庭木や公園の植栽として用いられることがあります。また、塩分や風に強い性質を持つため、海岸沿いの地域では防潮垣や防風垣としても利用されています。葉から発散される独特の臭いを昆虫が嫌う性質があることから、古くは天然の害虫除けとして用いられることもありました。

繁殖

ミツバハマゴウは、種子を播いて増やす方法と、枝の一部を用いて行う挿し木による方法のどちらでも繁殖が可能です。

近縁種

同じハマゴウ属には、海岸の砂地に自生するハマゴウ（Vitex rotundifolia）が広く分布しています。ミツバハマゴウとの違いは、樹形（直立性か匍匐性か）や、葉の形態（葉柄の長さ、小葉の数や形）で見分けることができます。さらに、日本では石垣島と西表島にのみ、ヤエヤマハマゴウ（Vitex bicolor）が稀に自生しています。ヤエヤマハマゴウは、ミツバハマゴウよりも小葉の数が多く（通常3〜5枚）、それらが掌状に広がる複葉を持ち、個々の小葉に明瞭な柄がある点で識別されます。

先述の通り、過去の分類体系ではクマツヅラ科とされていましたが、近年の分子系統解析などに基づき、現在はシソ科に分類されています。

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