ミディ＝ピレネー地域圏

ミディ＝ピレネー地域圏（Midi-Pyrénées）

かつてフランス共和国の南部に存在した広域行政区画であり、独自の議会を持つ地域圏でした。その名称は、フランス語で「南部」を意味する「Midi」と、南の境界を形成する「ピレネー山脈」に由来しています。

この地域圏は2016年1月1日をもって消滅しました。フランスの地域圏再編に伴い、東側に隣接していたラングドック＝ルシヨン地域圏と統合され、新たな「オクシタニー地域圏」の一部として再編成されたためです。したがって、現在はその名称で呼ばれる地域圏は存在せず、歴史的な区分となっています。

地理的には非常に多様な特徴を持っていました。その広大な領域は、西側でかつてのアキテーヌ地域圏と境を接し、東側ではこれまたかつてラングドック＝ルシヨン地域圏と隣り合っていました。北部では、かつてオーヴェルニュ地域圏およびリムーザン地域圏と境界線を共有していました。そして、南側には壮大なピレネー山脈がそびえ立ち、この山脈がスペイン王国およびアンドラ公国との自然な国境線を形成していました。

地域圏の地形は一様ではありませんでした。北部や西部には比較的平坦で広々とした土地が広がっており、農業などが盛んに行われていました。対照的に、東部から南部にかけては地形が険しくなり、山岳地帯が優勢となりました。特にピレネー山脈沿いの国境に近いエリアには、標高が3,000メートルを超えるような高くて切り立った山々が連なり、独特の景観を作り出していました。ツールマレー峠のように、自転車ロードレースの舞台としても知られる難所もこの地域に含まれていました。

ミディ＝ピレネー地域圏の中心、すなわち州都はトゥールーズでした。トゥールーズはフランス国内でも第4の規模を持つ大都市であり、特に航空宇宙産業の中心地として世界的に知られています。エアバス社の主要な製造拠点があるなど、この産業が地域の経済を牽引していました。州都トゥールーズを中心に、地域圏全体で産業振興が進められた結果、近年（地域圏が存在していた晩年）は圏内の人口が増加傾向にありました。

地域圏の全体的な規模を日本の地理と比較すると、その面積は日本の九州地方とほぼ同等であり、人口規模は日本の京都府に匹敵する程度でした。広大な面積の中に、多様な自然環境と都市部、そして豊かな歴史と文化（ガスコーニュ地方の一部を含むなど）が共存していました。

かつてのミディ＝ピレネー地域圏は、複数の県（デパルトマン）によって構成されていましたが、2016年の再編により、これらの県は新たなオクシタニー地域圏の管轄下に置かれました。歴史的な地名や関連する場所は、現在もオクシタニー地域圏の重要な一部として認識されています。

現在この地域を訪れる際には、オクシタニー地域圏として情報が提供されていますが、かつてのミディ＝ピレネー地域圏が有していた多様な魅力は、今もこの地に息づいています。

もう一度検索