ミトローパ

ミトローパ：鉄道と共に歩んだ歴史

ミトローパ（Mitropa AG）は、第一次世界大戦中の1916年にドイツで設立された鉄道寝台・食堂車を提供する会社です。正式名称は「Mitteleuropäische Schlaf- und Speisewagen Aktiengesellschaft」で、「中央ヨーロッパ寝台・食堂車株式会社」と訳されます。

設立の背景と初期の事業展開

設立の背景には、当時ヨーロッパの鉄道旅客サービスを独占していた国際寝台車会社（ワゴン・リ社）への対抗がありました。第一次世界大戦の影響でワゴン・リ社の活動が制限される中、ドイツを中心とする同盟国は新たな国際列車網の構築を目指し、ミトローパが設立されました。ミトローパは設立当初から株式会社の形態を維持し、自ら食堂車や寝台車を保有していました。

多角化と最盛期

両大戦間には、自動車、船舶、航空でのサービス提供業務へも進出し、経営の多角化を推進しました。ルフトハンザ航空からの機内食サービスの委託も受けています。1928年には睡眠用の枕を賃貸する会社を吸収し、鉄道利用者へのサービスを拡充しました。この頃、車両をワインレッドに塗り、エンブレムを取り付けることで、サービスの高級化も図りました。

第二次世界大戦後の苦難と東西分裂

第二次世界大戦後、ドイツは東西に分割され、ミトローパも東西に分断されました。西側ではドイツ寝台車食堂車会社 (DSG) が業務を引き継ぎましたが、東側ではミトローパがそのまま存続しました。東独政府の管理下におかれながらも株式会社の形態を維持し、東独国内で食堂車や寝台車のサービスを提供しました。しかし、社会主義体制下でサービスは徐々に劣化しました。

東西ドイツ統一後の再編と終焉

東西ドイツ統一後、旧西独のDSGと旧東独のミトローパは統合され、新生ミトローパが発足しました。しかし、鉄道の高速化や合理化に伴い赤字が慢性化し、事業規模を縮小。2002年には船舶におけるサービスを売却し、2003年には列車内供食サービスをドイツ鉄道旅行・観光会社へ譲渡しました。その後、イギリス資本のコンパスグループに買収され、2006年に鉄道駅やアウトバーンのレストラン運営事業を子会社へ譲渡し、事業体として消滅しました。

遺産

ミトローパが長年看板事業としていた食堂車、寝台車でのサービス提供は、現在民営化されたドイツ鉄道株式会社 (DB AG)の長距離列車部門であるドイツ鉄道旅行・観光会社 DB Reise & Touristik AG 傘下のシティナイトライン社へ引き継がれています。東独時代のミトローパの調度品は、中古品として市場に出回っており、旧東独を知る人々にとっては、社会主義時代を思い起こさせるアイテムとなっています。

ミトローパの歴史は、ドイツの鉄道史、社会情勢と深く結びついており、その盛衰は興味深い物語として語り継がれています。

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