ドイツ鉄道

ドイツ鉄道株式会社（DB）の概要

ドイツ鉄道株式会社（Deutsche Bahn AG、略称：DB）は、ドイツ連邦共和国の首都ベルリンに本社を置く、ドイツ最大の鉄道会社です。広大な鉄道網を有し、ドイツにおける主要交通手段として国民生活を支えるとともに、ヨーロッパを代表する鉄道企業として国際的にも大きな影響力を持っています。

1994年、旧西ドイツ国鉄（DB）と旧東ドイツ国鉄（DR）の統合と民営化によって誕生しました。しかし、民営化後も国家による株式保有が継続されており、完全民営化は今後の課題となっています。DBはドイツポスト/DHLに次ぐ世界第2位の運送会社と自称し、ヨーロッパ最大の鉄道運営会社およびインフラ所有者でもあります。2015年には世界最大の鉄道会社として収益を上げており、2019年には約48億人の旅客と約2億3200万トンの貨物を輸送しました。

DBの事業部門

DBは大きく分けて旅客輸送、貨物輸送、インフラの3部門で構成されています。

旅客輸送

DB Personenverkehr部門は、長距離輸送（DB Fernverkehr）、短中距離輸送（DB Regio）、およびイギリスの鉄道・バス事業者Arriva（2010年買収）などを傘下に収め、多様な旅客輸送サービスを提供しています。かつては愛称として「Die Bahn」を使用していましたが、2007年末から「Bahn」に変更されています。

貨物輸送

DB Schenkerは、フォワーディング事業などを展開し、DB Cargoはドイツ国内の鉄道貨物輸送を担います。DB CargoはかつてDBシェンカー・レールの一部でしたが、分離されました。

インフラ

DB Netz（鉄道インフラ）、DB Station&Service（駅とサービス）、DB Energie（エネルギー）の3部門が、ドイツ鉄道のインフラ整備と維持管理を担っています。

DBの特徴

DBは、駅や車両内の案内表示において、数字や記号（アイコン）を多用することで、言語の壁を越えた分かりやすい情報提供を実現しています。多くの駅では、自動券売機や窓口で経路案内のサービスも提供しています。

DBの料金制度

DBの料金制度は、利用する列車の種類や距離によって異なり、多様な割引制度が用意されています。

近郊列車

都市近郊の列車（Sバーンなど）では、ゾーン制運賃が適用されます。中央駅から同心円状に設定されたゾーン間を移動する距離に応じて運賃が決まります。このゾーン制切符は、地下鉄やバスなど、他の地域交通機関でも利用可能です。有効時間は発券後2時間程度で、原則として途中下車も可能です。ただし、有効時間や途中下車のルールは都市によって異なります。

長距離列車

長距離列車では、行き先を指定して切符を購入します。経由駅を指定したり、48時間以内の途中下車も可能です。ICE、IC、ローカル線など、列車の種類によって運賃が異なります。切符は窓口、自動券売機、インターネットで購入できます。インターネット予約では、クレジットカード決済が可能で、一部の国外他社線直通列車の切符も購入できます。

自動券売機

DBの駅には、タッチパネル式の自動券売機が設置されています。長距離路線用と近距離路線用があり、機能や決済方法（クレジットカード決済可否）が異なります。地方の無人駅では、近距離路線用の券売機しか設置されていない場合があります。

指定席

指定席券は別途4.90ユーロ必要です。座席指定は必須ではなく、空席であれば自由に座ることができます。ただし、ICEなど優等列車では、ボックス席の場合、予約区間の表示が入口の電光板に表示されます。

割引制度

DBは、自動車との競争を意識し、多様な割引制度を提供しています。主要な割引制度を以下に示します。価格は2024年現在のもので、変更の可能性があります。

BahnCard: 年会費制の割引カードで、25%割引（BahnCard 25）、50%割引（BahnCard 50）、乗り放題（BahnCard 100）などがあります。
Sparpreis/Supersparpreis: 飛行機の特割のような制度で、空席のある列車に適用されます。払い戻し可否が異なります。
Quer-durchs-Land-Ticket: 普通列車と快速列車が1日乗り放題になる切符です。
Deutschlandticket: 普通列車と快速列車が1ヶ月乗り放題になる切符です。インフレ対策として2023年から導入されました。

DBの路線網

DBの路線網は、約36,000kmに及び、日本の約9割の面積をカバーしています。軌間は大部分が1435mmの標準軌で、電化率は約50%、複線化率は約50%です。第二次世界大戦後は、東西ドイツ分割、不採算路線の廃線などにより、路線網は縮小しました。近年はEUの交通政策を受けて高速新線の建設が進められていますが、経済状況や環境保護問題なども影響して、建設ペースは鈍化しています。

DBの車両

DBとその系列会社には、蒸気機関車、電気機関車、ディーゼル[[機関車]]、電車、気動車、客車、貨車など、多様な車両が存在します。

電気機関車

特急旅客用から貨物用まで様々な形式があり、近年は欧州汎用タイプの機関車が増えています。代表的な形式として、101型、120型、181型、103型などがあります。

電車

高速用（ICE）、近郊用、Sバーン用、路面[[電車]]直通車などがあります。高速用としてはICE1～4、Thalysなどがあります。近郊用は420型、423型、424型、425型、426型など、Sバーン用はベルリン、ハンブルクそれぞれで異なる形式が使用されています。

気動車

ローカル線の経営改善のため、車両メーカー製の汎用軽気動車が多数投入されています。610型、611型、612型、640型、648型などがあります。

客車

優等列車用、快速・普通列車用など、様々なタイプの客車が存在します。運転台付き客車も多いのが特徴です。

貨車

コンテナ車、有蓋車、無蓋車など、10万両を超える貨車が使用されています。

車両番号体系

2007年1月より、車両番号体系が変更され、12桁のUIC番号が導入されました。これはオープンアクセスの拡大に伴い、車両の一元管理を目的としています。

DBの列車の種類

DBでは、様々な種類の列車が運行されています。

優等列車

ICE（インターシティエキスプレス）、IC（インターシティ）、EC（ユーロシティ）、TGV、railjet、ECE（ユーロシティエキスプレス）などがあります。

近郊・ローカル列車

RE（レギオナルエキスプレス）、RB（レギオナルバーン）、Sバーンなどがあります。

国際貨物列車

DB Cargo Eurasiaは、東アジアとヨーロッパを結ぶ長距離貨物列車を運行しています。

夜行列車

Nightjet（ナイトジェット）、EuroNight（ユーロナイト）などがあります。

過去に存在した列車の種類

TEE（Trans Europ Express）、IR（InterRegio）、F-Zug、D-Zug、E-Zug、FD-Zug、City-D-Zug、Metropolitan、ICN（InterCityNight）、Cisalpino、CNL（CityNightLine）、DB NachtZug、Stadt-Express、UrlaubsExpressなどがあります。

DBの時刻表

DBは、駅掲示用時刻表、車内配布パンフレット、冊子体時刻表、電子時刻表などを発行しています。冊子体時刻表は2008年12月をもって廃止されました。

DBの歴史

DBは、東西ドイツの鉄道が統合・民営化されて誕生しました。1991年のICE運行開始、1994年の民営化、1999年の持株会社制移行、2008年の組織再編など、歴史の中で様々な変化を遂げてきました。

DBの駅

DBは約3573駅を運営しています。

DBの文化活動

DBは、サッカーワールドカップやプロスポーツチームへのスポンサー活動など、積極的に文化活動に参画しています。

今後の課題

DBは、完全民営化、経営状態の改善、労働組合との関係、鉄道離れ対策など、多くの課題に直面しています。2022年にはスターアライアンスのインターモーダルパートナーに加盟するなど、新たな取り組みも開始しています。

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