ミドリイワサザイ

ミドリイワサザイ

分類と名称

ミドリイワサザイ（学名：Acanthisitta chloris）は、鳥類のスズメ目に属する一群です。イワサザイ科（Acanthisittidae）に分類され、この科の中でも特に独特な存在として知られています。分類学的には、本種のみでミドリイワサザイ属（Acanthisitta）を構成しており、これは「1属1種」という珍しい形態を示しています。また、その生息域において、いくつかの地理的な差異に基づいて二つの亜種が確認されています。

英語圏では「ライフルマン（Rifleman）」という通称で呼ばれることもあり、これはその素早い動きや、木の幹を登る様子がライフルの射撃手に例えられたことに由来するという説があります。

分布域

この小さな鳥は、ニュージーランドの島々にのみ自然分布する固有種です。北島および南島の森林地帯を中心に生息しており、その限られた分布域も特徴の一つと言えます。

形態的特徴

ミドリイワサザイは、世界最小クラスの鳥類の一つとして知られています。成鳥の体長はわずか7センチメートルから9センチメートル程度で、体重も6グラムから8グラムという驚くべき軽さです。日本の多くの場所で見られるスズメと比較しても、その半分以下の大きさしかありません。この極めて小さな体躯が、入り組んだ環境での生活に適応していると考えられます。全身の羽色は主に緑色を基調としており、これが和名の由来となっています。

生態と行動

食性と採餌

ミドリイワサザイの食性は完全に昆虫食です。小さなガやハエ、甲虫の幼虫など、森林に生息する様々な種類の昆虫やクモを捕食します。

特筆すべきは、オスとメスで採餌方法に明瞭な違いが見られることです。オスは比較的低い位置にある葉っぱの表面や、木の枝、幹に付着したコケの中などを丹念に探し回り、そこに潜む獲物を見つけ出します。一方、メスはより垂直方向の探索を得意としています。太い木の幹を下から上に向かって、まるでドリルで穴を穿つかのように、らせん状に巧みに登りながら移動します。そして、鋭い嘴を使って樹皮の隙間や割れ目に隠れた昆虫を巧みに引きずり出して捕らえます。このような採餌における性差は、同種内での競争を軽減し、利用できる餌資源を最大化するための適応と考えられています。

繁殖と営巣

繁殖期は、ニュージーランドの春から夏にあたる10月から1月頃にかけてです。ミドリイワサザイは通常、一生を共に過ごす基本的な一夫一妻制のペアを形成します。

巣作りは、木の枝の密集した場所や、古くなった切り株にできた自然の穴、さらには人工の巣箱なども利用して行われます。彼らの巣は、コケやシダの繊維、羽毛などを巧妙に組み合わせて作られたドーム状の構造をしており、雨や外敵から卵や雛を守る役割を果たします。

一度の繁殖で産む卵の数は、 typically 2個から5個です。卵から孵った雛は、オスとメスが協力して餌を運び、育てます。

しかし、彼らの営巣場所は必ずしも安全とは言えません。特に、ニュージーランドに持ち込まれた外来種の捕食者であるオコジョ（ストート、Mustela erminea）によって、巣が襲われ、卵や雛が捕食されるリスクに常に晒されています。

保全の状況

ミドリイワサザイは、国際自然保護連合（IUCN）が作成する絶滅のおそれのある種のレッドリストにおいて、2001年版の評価では「低危険種（Least Concern）」に分類されています。これは、直ちに絶滅の危機に瀕しているわけではないことを示していますが、その生息地である森林環境の変化や、外来捕食者による影響など、潜在的な脅威は存在するため、今後の継続的なモニタリングや保全努力が重要となります。

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