ミドリツバメ

ミドリツバメ (Tachycineta bicolor)

分類と概要

ミドリツバメは、スズメ目に含まれるツバメ科に属する鳥類の一種です。学名は Tachycineta bicolor といい、その和名の通り、特徴的な緑色の光沢を帯びた姿をしています。

形態

本種は比較的小型の鳥で、体長はおよそ13.5センチメートル、体重は約20グラムほどです。頭部には小さなくちばしがついています。成鳥の大きな特徴は、その羽色にあります。背面、すなわち頭部から背中にかけては、光の当たり方によって青みがかったり緑がかったりする、美しい光沢を持つ鮮やかな青緑色をしています。これとは対照的に、腹部から下尾筒にかけては純白色です。飛翔時に長く伸びる尾は、ツバメ類によく見られる二股に分かれた形状ですが、本種ではその先端が細かく分かれているのが特徴です。

生態

ミドリツバメは、主に湖沼や河川、湿地帯など、水辺に近い森林環境を好んで生息しています。繁殖期になると、営巣場所として枯れた木の幹にできた自然の穴（樹洞）や、キツツキなどが掘った古い巣穴を利用します。また、人工の巣箱を用いることもあります。食性は主に昆虫食で、飛行しながら空中を飛び交う昆虫を捕らえて食べます。特に水辺を活発に飛び回り、水面近くを飛ぶ昆虫を巧みに捕獲します。

繁殖期以外、特に渡りの季節になると、ミドリツバメは数百羽、時にはそれ以上の大規模な群れを形成することが知られています。このような大きな群れは、彼らが越冬地へと移動する際の壮観な光景となります。普段は森林環境にいることが多い本種ですが、渡りの時期には開けた平野部や農耕地など、普段はあまり見られない場所でも、比較的容易に観察されることがあります。鳴き声は多様で、「クウィー」と聞こえる警戒音や、「ク、ク、ク」と連続して鳴く地鳴きなど、様々な状況に応じて使い分けます。

分布と渡り

ミドリツバメは、北米大陸に広く分布しています。繁殖地は、アラスカからカナダ、そしてアメリカ合衆国北部にかけての広範囲にわたります。夏の繁殖期を終えると、冬の寒さを避けるために南下し、メキシコ、中央アメリカ、そしてカリブ海の島々である西インド諸島などで越冬します。春になると再び繁殖地を目指して北上するという、規則的な渡りを行います。

しかし、稀に本来の渡りルートから大きく外れてしまうことがあります。知られている例としては、北大西洋を越えて遠く離れた西ヨーロッパで記録されることがあります。さらに、日本では極めて稀な迷鳥として知られており、公式に記録されているのはわずか一例のみです。これは1962年に北海道の襟裳岬で発見された個体で、残念ながら灯台に衝突し命を落とした一羽の記録が残されています。この記録は、本種が通常生息する地域からいかにかけ離れた場所に迷い込むことがあるかを示す貴重な事例となっています。

ミドリツバメは、その美しい色彩と巧みな飛翔能力、そして大規模な渡りを行う生態によって、多くの人々を魅了しています。

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