ミハイル・テリアン

ミハイル・ニキートヴィチ・テリアン（Mikhail Nikitovich Tėrian）は、1905年7月14日にモスクワで生を受け、1987年10月13日に同じくモスクワでその生涯を終えた、ソビエト連邦を代表する音楽家です。ヴィオラ奏者、指揮者、そして教育者として多方面で功績を残し、1945年にはアルメニア共和国人民芸術家に選ばれています。

彼の音楽の旅は、1919年から1925年にかけてのモスクワ音楽院での学びから始まりました。ヴァイオリンをゲオルギー・ドゥロフやコンスタンティン・モストラスに、ピアノをコンスタンティン・イグームノフに師事。また、フェリックス・ブルーメンフェルトやエフゲニー・グジコフのもとで室内楽の研鑽を積みました。

音楽院在学中の1923年、彼はヴァイオリンからヴィオラへと主要楽器を変更します。翌年、アルメニア系の学友たちと共に弦楽四重奏団を結成。このアンサンブルは後にコミタス記念弦楽四重奏団として知られるようになり、1932年にその名を冠されました。テリアンは、一時的な離脱期間（1936年〜1938年）を除き、結成から1947年までの約20年間、ヴィオラ奏者としてこの団体の中心的な存在でした。彼らが国内外で高い評価を得た証として、1946年にはスターリン国家賞の第2席を受賞しています。弦楽四重奏での活動と並行して、オーケストラ奏者としても才能を発揮。1926年から1931年、そして1941年から1945年の期間、ボリショイ劇場の首席ヴィオラ奏者として演奏しました。

指揮者としてのキャリアは、1946年に母校であるモスクワ音楽院の学生オーケストラを指揮したことから幕を開けました。この学生オーケストラを1973年まで率い、海外公演や録音活動を積極的に行いました。特に、カバレフスキーの「ソビエト連邦の青年に捧げる協奏曲3部作」のうち、1948年初演のヴァイオリン協奏曲と1949年初演のチェロ協奏曲第1番の世界初演を指揮したことは特筆されます。また、1954年から1960年にかけては、レフ・シテインベルクが創設したモスクワ国立交響楽団の首席指揮者として、1965年から1966年にはアルメニア・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督および首席指揮者として、それぞれオーケストラを率いました。

教育者としての貢献も多大です。1935年にヴィオラのアシスタントとして母校モスクワ音楽院で教え始めて以来、彼は熱心な指導を続けました。1937年には四重奏、1945年からはヴィオラのクラスも担当するようになります。1944年には教授に昇進し、1961年からはオペラ・交響楽指揮部門の主任を務めました。彼の教え子の中には、有名なボロディン弦楽四重奏団のヴィオラ奏者を務めたドミトリー・シェバリーンなどがいます。テリアンは、演奏、指揮、教育の各分野でソビエト連邦の音楽界に貢献し、その功績は高く評価されています。

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