ミハイル・ミロラドヴィチ

ミハイル・アンドレーエヴィチ・ミロラドヴィチ伯爵の生涯

ミハイル・アンドレーエヴィチ・ミロラドヴィチ伯爵（1771年 - 1825年）は、帝政ロシアの貴族であり、卓越した軍人として知られています。彼はナポレオン戦争中、ロシア軍の指揮官として多くの戦闘に参加し、その軍事的才能を発揮しました。ミロラドヴィチ家の起源はセルビアとヘルツェゴビナにさかのぼります。

彼の軍歴はロシア軍への入隊から始まります。アレクサンドル・スヴォーロフ将軍の指導の下で対トルコ戦争やポーランド戦争に従軍し、1799年にはイタリアおよびスイスへの遠征において前衛部隊の指揮官として名を馳せました。1805年、ミロラドヴィチは中将に昇進し、ミハイル・クトゥーゾフ将軍の指揮下で著名なアウステルリッツの戦いに参加しました。この戦闘では、プラツェン高地での決定的な局面に貢献し、さらなる名声を獲得しました。

その後、彼は露土戦争にも参加し、1806年のブカレストにおいて特に際立った勇敢さを示し、その功績が認められて名誉の剣を授与されました。1810年には歩兵大将に昇進し、以後も重要な戦闘で活躍しました。

ナポレオンのロシア遠征において、ミロラドヴィチはロシア軍の主要な指揮官の一人として重要な役割を果たしました。特にボロジノの戦いでは、民兵を率いて後衛を担当しましたが、戦局は厳しく、ロシア軍は一時敗走しました。しかし、ナポレオンの退却が始まると、ミロラドヴィチの部隊はヴャズマの戦いでフランス軍に逆襲を仕掛け、この戦いでの彼の指揮は特に称賛されました。

1813年にはバウツェンの戦いで連合軍の後衛を指揮し、1814年にはオランダ遠征軍を率いるなど、一貫して指導的な立場で軍務に従事しました。その間、彼は一度も重傷を負わなかったため、「幸運なミロラドヴィチ」との異名を持ち、部下から広く支持を受けていました。

1818年にはペテルブルクで軍務知事を務めます。しかし、彼の生涯は1825年のデカブリストの乱で悲劇的に終わります。この乱が発生すると、新帝ニコライ1世は血の惨事を避けるため、ミロラドヴィチを勅使として派遣し、デカブリストへの説得を試みましたが、彼は首謀者によって狙撃されて命を落としました。

ロシア史の研究者ウラジーミル・ブリュハーノフは著書『ミロラドヴィチ伯爵の陰謀』の中で、彼が単にデカブリストの乱の犠牲者ではなく、もし乱が成功していた場合には軍事独裁者としてクーデターの候補者になり得た人物であると考察しています。ミロラドヴィチ伯爵は、その軍事的才能とともに、波乱の時代の中で生涯を全うした重要な人物として、今もなおロシアの歴史に名を刻んでいます。

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