ミハイル1世 (コンスタンディヌーポリ総主教)

ミハイル1世ケルラリオスと東西教会の相互破門：1054年の出来事とその影響

ミハイル1世ケルラリオス（1000年頃 - 1059年）は、11世紀半ばにコンスタンティノープル総主教を務めた重要な宗教指導者でした。彼の在任期間は、東方教会（正教会）と西方教会（カトリック教会）の断絶を象徴する出来事である「東西教会の相互破門」によって特徴付けられます。この事件は、宗教的相違だけでなく、政治的背景や権力闘争も複雑に絡み合ったものでした。

ミハイル1世ケルラリオスの生涯と時代背景

コンスタンティノープル（現在のイスタンブール）に生まれたミハイル1世は、1043年から1059年まで総主教の座に就きました。彼の時代、東ローマ帝国は内紛や経済的衰退に苦しんでおり、政治的不安定さが教会にも影を落としていました。皇帝イサキオス1世コムネノスによる財政政策は、教会の資産没収を伴い、ミハイル1世との対立を招きました。こうした政治的混乱の中、ミハイル1世は1059年に亡くなりました。

東西教会の相互破門：1054年の出来事

ミハイル1世とローマ教皇レオ9世の間の対立は、聖体礼儀におけるパンの種類（発酵パンか無発酵パンか）といった慣習の違いや、コンスタンティノープル総主教の称号「全地総主教」をめぐる権威の争いから始まりました。「全地総主教」という称号は、ローマ教皇の絶対的な権威を脅かすものとしてローマ側には受け止められました。さらに、聖霊の起源に関する「フィリオクェ問題」も両教会間の対立を深める要因となりました。

ローマ教皇庁の使節としてコンスタンティノープルを訪れた枢機卿フンベルトは、ミハイル1世との対話に失敗し、1054年6月16日、アギア・ソフィア大聖堂においてミハイル1世と彼の支持者たちに対する破門状を宣告しました。これに対してミハイル1世もフンベルトとその一行を破門しました。この相互破門は、東西教会の分裂を象徴する出来事として広く認識されていますが、その有効性については議論があります。

相互破門の有効性に関する議論

この相互破門が東西教会の分裂を決定づけたという見方は、いくつかの点で疑問視されます。まず、レオ9世は既に死去しており、ローマ側からの破門はフンベルト個人の行動だった可能性が高いです。また、破門状の内容が曖昧であり、東方の正教徒全員を対象としたものなのか不明瞭です。ミハイル1世側の破門もフンベルト個人とその同行者に向けられたものでした。これらのことから、1054年の相互破門は、東西教会の対立を象徴する出来事ではあったものの、分裂の決定的な要因とは言い切れないとする見解もあります。

実際、東西教会間の対立は、ローマ教皇の権威、聖像破壊論争、フィリオクェ問題、カール大帝の戴冠、フォティオスの分離、スラヴ語典礼など、長年にわたる様々な要因が積み重なって生じていました。1054年の相互破門は、そうした対立の歴史の中で、一つの重要な出来事ではあったものの、最終的な分裂の決定打ではなかったと言えるでしょう。東西教会の分裂が決定的なものとなるのは、1204年の第4回十字軍によるコンスタンティノープル陥落を待たなければなりません。

1965年に東西両教会はこの相互破門を解消しましたが、完全な和解には至っていません。このことは、1054年の出来事が単なる象徴的な出来事ではなく、歴史的な分岐点であったことを示唆しています。ミハイル1世ケルラリオスと1054年の相互破門は、東西教会の歴史を理解する上で重要な一石を投じているのです。

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