ミハイル2世 (キエフ大公)

ミハイル2世：モンゴル襲来の時代のルーシの英雄とその複雑な遺産

ミハイル2世（1179年 - 1246年）は、キエフ大公国という激動の時代を生きた、重要な歴史的人物です。彼は、キエフ大公の地位だけでなく、ペレヤスラヴリ公、ノヴゴロド公、チェルニゴフ公、そしてガーリチ公を歴任しました。その生涯は、権力闘争、外交、そしてモンゴル帝国の台頭という、複雑に絡み合った出来事に満ち溢れていました。

ミハイル2世は、キエフ大公フセヴォロド4世とポーランド大公カジミェシュ2世の娘との間に生まれました。父の後を継ぎペレヤスラヴリ公となり、その後、チェルニゴフ公、ノヴゴロド公へと勢力を拡大していきます。

1223年のカルカ河畔の戦いでは、ルーシ軍に参加し、戦いの激しさ、そしてその後チェルニゴフ公の座を継承した過程が彼の将来のキャリアを大きく左右しました。ノヴゴロド公在任中は、民衆の負担軽減に努め、その治世は一定の評価を受けています。しかし、他の諸侯との領土争いや権力争いにも巻き込まれ、常に政治的駆け引きを強いられる立場にありました。キエフ大公位をめぐる争いにも関与し、ガーリチ公ダニールと幾度も衝突しています。

1230年代半ばには、ガーリチを支配下に置き、一時的にキエフ大公の座に就きます。しかし、モンゴル帝国の侵攻という、時代の大きなうねりを前に、彼の運命は大きく変わることになります。

1237年、ミハイル2世は第一次モンゴル侵攻への対応としてリャザンへ向かいましたが、年代記によっては兵の供出を拒んだとする記述もあり、彼の対応には諸説あります。1238年、キエフ大公位に就いた彼は、モンゴル軍の脅威に直面し、1239年にはチェルニゴフ陥落を目の当たりにし、キエフからハンガリーへ逃亡しました。その後、モンゴルの支配下に置かれたキエフに戻り、再びキエフ大公の座につきますが、その後ヤロスラフにその座を奪われ、チェルニゴフに戻り、そこで暗殺されて生涯を終えました。

ミハイル2世の死には様々な説が存在します。ある年代記は、モンゴル軍の指導者バトゥ・カンの命により、異教の儀式を拒否したために殺害されたと伝えています。一方で、キエフ大公ヤロスラフ3世のように、モンゴルに協力的な勢力によって毒殺されたという説もあります。いずれにせよ、彼の死はモンゴル帝国によるルーシ支配の確立という、歴史の転換点において起こった出来事でした。

ミハイル2世の死後、彼は聖人として崇められ、1543年にはアルハンゲリスキー大聖堂の聖者の群像画に加えられました。彼の遺体はチェルニゴフからモスクワに移され、現在も聖遺物として保存されています。

興味深いのは、ミハイル2世の死後、彼の血筋を主張する多くの家系が現れたことです。ドルゴルーコフ家、ヴァルコーンスキー家など、数多くの名門貴族がミハイル2世を祖先として系譜を編纂しました。しかし、21世紀の遺伝子研究は、これらの家系の多くがウラジーミル2世モノマフの直系の子孫ではないことを示しています。ミハイル2世の系譜をめぐる物語は、歴史と伝説が複雑に絡み合った、興味深い謎を私たちに残しています。

ミハイル2世の生涯は、モンゴル帝国の台頭という激動の時代を生き抜いた一人のルーシの公の物語であり、同時に、権力、信仰、そして歴史の解釈という、複雑なテーマを私たちに提示する、奥深い歴史の断片です。彼の生涯、死、そしてその後の聖人化、系譜をめぐる議論は、13世紀のルーシ社会、そしてその後のロシアの歴史を理解する上で重要な要素となっています。

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