ミフネリュウ

ミフネリュウ（御船竜）

ミフネリュウ（御船竜）は、日本の九州地方で発見された獣脚類恐竜に与えられた非公式の名称です。この恐竜の発見は、1本の歯の化石から始まり、その特異な特徴によりメガロサウルス科に分類されています。発見された場所は、熊本県上益城郡御船町に位置する御船層群です。

発見の経緯

1979年8月5日、教員の早田幸作氏が小学1年生の息子と共に、御船町梅木の露頭で貝の化石を収集している際に、サメの歯のような化石を見つけました。早田氏はその化石が珍しいサメの歯だと思い込み、熊本大学の村田正文教授を通じ、化石を国立科学博物館の上野輝爾氏に送付しました。上野氏は、その化石がサメの歯ではないと特定し、横浜国立大学の長谷川善和教授に鑑定を依頼しました。

1984年、日本古生物学会で長谷川氏と村田氏によって、この化石が肉食恐竜のものであることが発表されました。この発見は、日本国内での恐竜化石のニュースとして位置づけられた初めてのものでした。さらに1992年には、長谷川氏、村田氏、早田氏、イェール大学の真鍋真氏による詳細な論文が発表されました。1980年代にはデヴィッド・ランバートによってミフネサウルス（Mifunesaurus）という名で紹介されたものの、正式な学名としての記載は行われていません。

特徴

現在知られているミフネリュウの標本YNUGI10003は、先端が欠けた1本の歯です。この歯は72.7 mmの長さを持ち、幅は12.3 mm、前後方向の基部の長さは22.5 mmです。歯冠は長く、横に潰れた形状をしており、他の獣脚類と比較しても非常に特異です。例えば、アロサウルスやティラノサウルスでは、基部の幅と歯冠の比がそれぞれ0.35と0.30であるのに対し、ミフネリュウの比は0.17です。これにより、特にその形状の違いが際立っています。

この歯の先端はやや曲がっていて、前後の鋸歯があり、5 mmあたりに約20個存在します。鋸歯は先端部分で特に明瞭で、後方には血管溝が見られますが、皺はあまり目立ちません。この歯の形状は、中国の恐竜であるメガロサウルス・バックランディ（Megalosaurus bucklandii）やメガロサウルス・ヘスペリス（Megalosaurus hesperis）、ガソサウルスに似ていますが、特にNSM PV 15071に類似しています。ただし、これらのサンプルについては分類が確定していないため、ミフネリュウはこれらとの関係性からメガロサウルス科に位置付けられます。

発見地と年代

ミフネリュウの歯は九州中部に広がる御船層群から発見されました。この地域は白亜紀の地層が含まれ、下部層からは汽水や浅海に生息していた貝類の化石が確認されています。また、イノセラムスの化石から、発見された歯の年代は後期白亜紀、特にセノマン期に属するものと推測されています。そのため、この歯の化石は流されて他の部分が保存されずに化石化したと考えられています。

しかし、ミフネリュウの発見は、御船層群における恐竜化石の調査を促進し、その後1990年代以降に他の恐竜化石が相次いで発見されています。この流れから、御船町には恐竜博物館が建設され、その研究も進められています。

生態

一般的にメガロサウルス科は二足歩行の肉食恐竜であったとされ、ミフネリュウもその特性を持っていたと考えられます。既存の資料からは、恐竜の生態に関する詳しい情報はまだ明らかになっていませんが、今後の研究に期待されます。

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