アロサウルス

アロサウルス：ジュラ紀後期の頂点捕食者

アロサウルス（学名 Allosaurus、和名：異竜）は、中生代ジュラ紀後期（約1億5500万～1億4500万年前）に北アメリカ大陸やヨーロッパに生息していた大型の肉食恐竜です。ティラノサウルスと並んで、古生物学研究において非常に有名で、多くの図鑑や書籍で紹介されている馴染み深い恐竜と言えるでしょう。日本では、1964年に国立科学博物館で初めて恐竜の全身骨格標本が公開され、その後2015年には地球館1階に常設展示されるようになりました。

アロサウルスの特徴

アロサウルスは二足歩行で、大型で強力な後肢と、それに比べて短い3本指の前肢を持っていました。長い厚みのある尾でバランスを取っていたと考えられます。平均的な体長は8.5mですが、最大級の個体では12mに達したと推定されています。体重は1～4トン程度と推測されていますが、様々な意見があり、正確な数値は未だ不明瞭な点があります。

特に特徴的なのはその頭骨です。同サイズの獣脚類と比較すると、頭骨は比較的軽量で、様々な孔によって軽量化が図られています。上顎にはD字型の断面を持つ5本の歯、その後ろには14～17本の歯が生えており、下顎にも14～17本の歯が生えていました。歯は奥に行くほど小さく湾曲しており、縁には鋸歯状の凹凸がありました。頻繁に歯が抜け落ち、生え替わっていたようです。

頭骨には、涙骨が伸びてできた一対の角のような突起があり、ケラチンで覆われていた可能性があります。この角の役割については、日よけ、ディスプレイ、種内闘争など、複数の仮説が提唱されています。また、頭骨後部には筋肉が付着する小さな突起があり、衝撃を軽減する役割を果たしていた可能性が示唆されています。

アロサウルスは、首に9個、背中に14個、腰に5個の椎骨を持ち、尾椎骨の数については個体差があり、50個という説と45個以下という説があります。首の椎骨には気嚢が存在したと考えられ、現生の鳥類と同様の呼吸システムを持っていた可能性があります。肋骨は広く、胴体は太めでした。腹肋骨や叉骨の存在も確認されています。恥骨は竜盤類特有の構造で、体を地面に下ろして休息する際の支えとして機能していたと考えられます。また、恥骨の先端の癒着の有無が性差を示しているという説も提唱されましたが、現在ではあまり支持されていません。

前肢は後肢に比べて短く、3本の指の先には湾曲した大きな爪がついていました。腕は強力で、前腕は上腕よりもやや短かったです。手根骨は半月形で、これは鳥類を含む小型獣脚類に見られる特徴と同様です。後肢はケラトサウルスのような同時代の獣脚類と比べると長かったものの、ティラノサウルスほど長くはなかったため、移動速度はティラノサウルスよりも低かったと考えられています。

アロサウルスの分類

アロサウルスは、獣脚類、テタヌラ類、カルノサウルス類、アロサウルス科に属します。アロサウルス科は、1878年にオスニエル・チャールズ・マーシュによって命名されましたが、1970年代まではメガロサウルス科という分類が用いられることもありました。属名としては、20世紀前半にアントロデムスが用いられることもありましたが、ジェームズ・マドセンの研究によりアロサウルスが復活しました。

アロサウルス科には、いくつかの属が分類されてきましたが、21世紀初頭の研究では、アロサウルス科に属するものはアロサウルス属とサウロファガナクス属程度に絞り込まれています。以前はエパンテリアスなども含まれていましたが、現在ではアロサウルスの大型個体ではないかと考えられています。アロサウルス科は、カルカロドントサウルス科、シンラプトル科と共にアロサウルス上科を形成します。

アロサウルス属内にも、いくつかの種が提唱されていますが、その分類については議論が続いています。代表的な種としては、A. fragilis（フラギリス種）が挙げられます。これは、最も多くの化石標本が発見され、研究が進められている種です。

アロサウルスの生態

アロサウルスは、モリソン層で最も多く発見される獣脚類で、当時の食物連鎖の頂点捕食者であったと考えられています。同時代の草食恐竜であるステゴサウルスや竜脚類を捕食していたと考えられていますが、狩猟方法については未だ解明されていない点が多く、様々な仮説が提唱されています。集団で狩りをしていたという説や、待ち伏せして奇襲していたという説などが存在します。また、共食いの痕跡も見つかっているため、アロサウルスの社会性についても議論が続いています。

アロサウルスの成長過程については、多くの化石標本が発見されたことにより研究が進んでいます。寿命は22～28年程度と推定され、成長は15歳前後がピークだったと考えられています。髄様骨の存在から、雌は産卵期にカルシウムを供給するために髄様骨を生成していたことが示唆されています。幼体の化石から、成体と比べて脚が長く、俊敏であったことがわかっています。

食性については、竜脚類やステゴサウルスを捕食していたと考えられています。しかし、顎の力はそれほど強くなかったと推定され、大型の獲物を狩る際には、上顎をナイフのように使って切りつける攻撃方法を用いていた可能性が指摘されています。

アロサウルスの社会性については、集団狩りをしていたという説と、むしろ種内競争が激しかったという説があり、未だ結論が出ていません。共食いの痕跡も発見されています。

国立科学博物館のアロサウルス

国立科学博物館には、ジェームズ・マドセンがクリーブランド・ロイド発掘地から収集したアロサウルスの全身骨格標本（頭部のみレプリカ）が展示されています。この標本は、小川勇吉氏という日本人の寄贈によるものです。1964年に日本で初めて公開され、その後、2015年7月14日から地球館1階で再び常設展示されています。

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