ミャンマーの政治

ミャンマーの政治

ミャンマー連邦共和国の政治は、複雑な歴史と独特な構造を持っています。かつてビルマと呼ばれたこの国は、19世紀に大英帝国の植民地となり、第二次世界大戦中の日本占領期を経て、1948年に独立を果たしました。独立当初は議院内閣制を導入し、民主主義国家を目指しましたが、多数派ビルマ族と少数民族との間の対立が顕在化し、宗教的な緊張も加わって国内は不安定な状況が続きました。特に少数民族は政治参加や権利が制限され、弾圧に苦しむ人々が多く、武装勢力による抵抗も生まれました。

1962年のネウィン将軍によるクーデター以降、ミャンマーは長らく軍事政権による統治下に置かれました。「社会主義へのビルマの道」の下、経済は閉鎖的となり、国民の自由は厳しく制限されました。軍事支配への抗議活動は容赦なく鎮圧され、多くの犠牲者が出ました。その後の国家平和開発評議会（SPDC）時代も、人権侵害が国際社会から非難されました。欧米諸国は経済制裁を発動し、多くの西側企業が撤退しましたが、一部の企業は天然資源分野での事業を継続し、人権問題で訴訟対象となるケースもありました。民主化運動指導者のアウンサンスーチー氏も自宅軟禁下に置かれ、国際社会は彼女の解放を求め続けました。

国際的な孤立が進む中、軍事政権は段階的な改革に着手し、2010年と2012年には複数政党制に基づく選挙が実施されました。現在の政治体制の基盤となるのは、2008年に国民投票で承認された憲法です。この憲法は、国防省、内務省、国境総務省を軍の管轄とし、連邦議会の議席の25%を軍人に自動的に割り当てるなど、国軍に強大な権限を与えています。

2010年の総選挙では、軍が後援する連合連帯開発党（USDP）が勝利しましたが、多くの国から不正が指摘されました。しかし、2012年の補欠選挙では、主要野党である国民民主連盟（NLD）が圧勝し、民主化への期待が高まりました。そして、2015年の総選挙ではNLDが圧勝し、国会の両院で過半数の議席を獲得しました。これにより、NLDから大統領が選出されることとなりましたが、アウンサンスーチー氏自身は憲法の規定により大統領に就任できませんでした。この2015年の選挙結果は、長年の軍事支配から民主主義体制への移行における重要な一歩と見なされました。

現在の行政機関では、大統領が国家元首を務め、事実上の政府の長である州参事官が存在します。しかし、国軍最高司令官は立法府における軍人議員の任命権を通じて、重要な法改正を阻止できる影響力を持っています。連邦議会は人民議会と国民議会の二院制ですが、両院とも軍人枠の議席が確保されています。司法制度は行政府からの独立性が乏しく、公正な裁判が十分に保障されているとは言えません。歴史的には、ワレル・ダマタットのような古代の法典も存在しました。

ミャンマーの行政区分は、7つの地域と7つの州に分かれており、加えて民族構成を考慮した自己管理ゾーンや部門が設けられています。また、ミャンマーはアジア開発銀行、ASEAN、国連、IMFなど、多くの国際機関に参加し、国際社会との関係を築いています。

ミャンマーの政治は、民主化への歩みを続ける一方で、軍の権力、民族間の和解、人権保障といった多くの複雑な課題に直面しており、その将来は国際社会からも注目されています。

もう一度検索