ミヤリサン製薬

ミヤリサン製薬株式会社（MIYARISAN PHARMACEUTICAL CO., LTD.）は、人々の腸内環境を整える医薬品、特に酪酸菌を主成分とする製剤の製造と販売を主な事業とする日本の企業です。同社にとって重要な成分である酪酸菌は、創業者の医学博士・宮入近治氏によって発見されたものであり、社内ではしばしば「宮入菌」とも称されています。

ミヤリサン製薬の起源は、1933年に宮入近治博士が当時在籍していた千葉医科大学（現在の千葉大学医学部）にて酪酸菌を発見したことに遡ります。この発見は、腸内細菌研究の分野において重要な一歩となりました。発見された酪酸菌の有用性に着目し、博士はその工業的な生産を目指しました。その努力が実を結び、1940年には酪酸菌の工業生産が開始されました。続く1947年には、研究開発をさらに推進するための組織として宮入菌剤研究所が設立され、これが現在の会社の基礎となりました。製造拠点の整備も進められ、1950年には長野県埴科郡戸倉町（現在の千曲市）に戸倉工場を設立し、生産体制を構築しました。

事業の拡大と効率化を図るため、組織の再編も行われました。1965年には、製品の販売を専門に行う子会社としてミヤリサン株式会社が資本金5千万円で設立されました。その後、研究開発部門と販売部門を一本化するため、1974年に宮入菌剤研究所とミヤリサン株式会社が合併。資本金を2億円に増強し、本社機能を東京都北区上中里に移転しました。製造拠点については、1998年に長野県埴科郡坂城町に最新鋭の坂城工場を新設し、これに伴い従来の戸倉工場を廃止・移転統合することで、生産体制の合理化を図りました。そして、設立から約60年を経た2006年、社名を現在のミヤリサン製薬株式会社に変更し、企業イメージを刷新しました。

現在のミヤリサン製薬は、東京都北区に本社・東京支店を構えるほか、長野県埴科郡坂城町には本店、長野支店、主要製造拠点である坂城工場、そして長野生産技術研究所が集約されています。研究開発機能は強化されており、埼玉県さいたま市には中央研究所およびイノベーションセンターが設けられています。販売網は全国に広がり、札幌、仙台、関東信越（さいたま市）、名古屋、大阪、広島、福岡、鹿児島といった主要都市に支店を配置しています。

ミヤリサン製薬が市場に提供する主な製品は、創業者の発見した酪酸菌を配合した各種の整腸剤です。代表的なものとして、

強ミヤリサン錠【指定医薬部外品】
ミヤフローラEX【指定医薬部外品】
* 新ミヤリサンアイジ整腸薬【第3類医薬品】

などがあり、一般用医薬品や指定医薬部外品として、多様な消費者のニーズに応えています。これらの製品は、酪酸菌の働きによって腸内フローラを良好に保つことを目的としています。

企業の認知度向上や啓発活動にも積極的に取り組んできました。かつては、日本のプロ野球の本拠地として多くの人が集まる後楽園球場や東京ドームにおいて、一塁側内野席の中段に「腸にミヤリサン」という印象的な広告を長期間掲示しており、その名前は多くの人々に記憶されました（この広告掲示は2000年まで）。また、スポーツイベントへの協賛も行っています。特に、福岡国際マラソンでは、2021年まで九州朝日放送制作のラジオ中継の冠スポンサーを務め、その後大会運営体制が変更された2022年以降は、テレビ朝日系列全国ネット向けテレビ中継の共同提供社の一つとして支援を継続しています。

メディアを通じた情報発信として、健康情報番組やラジオドラマへの提供も行っています。TBSラジオで放送されている「腸から始まる健康ライフ」では冠スポンサーを務め、腸の健康に関する有用な情報を提供しています。また、九州朝日放送制作のラジオドラマ「下町ロケット」や「アキラとあきら」でも冠スポンサーとなるなど、文化活動の支援も行っています。

その他、ユニークな点として、現在の東京都北区にある本社社屋は、かつて存在した昌平高等学校の旧校舎を改修して利用していることや、ペットの腸内環境ケアを目的としたペットブランド「ヒューペル」を展開し、人間だけでなく動物の健康にも貢献しようとしている点が挙げられます。

ミヤリサン製薬株式会社は、創業者が発見した酪酸菌という独自の強みを核に、長年の歴史の中で培ってきた技術と信頼に基づき、人々の健やかな生活、特に腸の健康を支える製品を提供し続けています。

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