ミュンヘン新分離派

ミュンヘン新分離派の成立と背景

ミュンヘン新分離派（Münchener Neue Secession）は、1913年にミュンヘン分離派から分裂して誕生した美術家グループです。1892年に設立されたミュンヘン分離派は、当初は革新的な芸術運動を推進していましたが、次第に保守的な傾向を強めていきました。これに対し、より前衛的な芸術を求める若手芸術家たちが、新たなグループの結成を模索するようになりました。

新分離派の設立には、既存のグループに所属していたメンバーが深く関わっています。その中には、1899年から1911年まで活動した「Scholle」（耕地）というグループや、1909年に創立された「ミュンヘン新芸術家協会」のメンバーも含まれていました。さらに、パウル・クレーを中心に1911年から1913年まで活動していた「Sema」（記号）という芸術家グループのメンバーも合流しています。

主要メンバーと設立趣旨

ミュンヘン新分離派の主要なメンバーには、画家のパウル・クレー（1879-1940）、アルベルト・ヴァイスゲルバー（1878-1915）、アドルフ・エルプスレー（1881-1947）、カール・アーノルト（1883-1953）、アレクセイ・フォン・ヤウレンスキー（1865-1941）といった画家たち、そして彫刻家のベルンハルト・ブレーカー（1881-1968）がいました。彼らは、1910年にベルリンで設立された「新分離派（Neue Secession）」をモデルに、ミュンヘンでの新たな芸術運動を立ち上げました。

設立趣意書には、「ミュンヘンという芸術の中心地で活動する様々な小さなグループの若い才能を結集し、特定の芸術運動に限定せず、すべての創造的な芸術家の活動に貢献すること」が目的として掲げられました。これは、既存の分離派が特定のスタイルや価値観に固執していたのに対し、より自由で多様な芸術表現を追求しようとする姿勢を示しています。

活動と終焉

アルベルト・ヴァイスゲルバーが初代会長を務め、1914年5月30日から10月1日まで、最初の展覧会が開催されました。当初は「Münchener Neue Secession」という名称でしたが、1917年から「Neuen Münchener Secession」に変更されました。ミュンヘン新分離派は、その後も会場を移しながら定期的に展覧会を開催し、その活動を続けました。

しかし、ナチスが権力を掌握すると、芸術活動に対する統制が強化され、ミュンヘン新分離派もその影響を免れませんでした。1937年12月21日、ナチスによって強制的に解散させられ、その歴史に幕を閉じました。この解散は、当時の芸術運動に対する抑圧的な政治状況を象徴する出来事と言えます。

戦後の再結集

第二次世界大戦終結後、1946年にミュンヘンで新たな美術団体「Neue Gruppe」が設立されました。この団体には、かつてのミュンヘン新分離派のメンバーが多く参加し、戦後の芸術活動の再建に貢献しました。これは、ナチス政権によって中断された芸術運動が、戦後再び息を吹き返したことを示すものです。

ミュンヘン新分離派は、短い活動期間ではありましたが、その後の芸術運動に大きな影響を与えました。彼らの活動は、20世紀初頭のミュンヘンの芸術シーンにおいて、重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

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