ミラージュIV (航空機)

ミラージュIV（Mirage IV）

フランスの超音速戦略爆撃機であるミラージュIVは、核抑止力の基盤を形成するために開発されました。この機体は、1950年代中盤からアメリカの核戦力への依存を減らす目的で独自の核爆撃能力を持つ戦力を構築するために計画されました。ミラージュIVは、爆撃の際に高高度での超音速巡航を行う能力が求められ、敵の防空網を突破するための戦略的な設計がされています。

開発の背景と初飛行

フランスは第二次中東戦争の影響を受け、独自の核戦力の必要性を認識します。ダッソー社では、当初はミラージュIIIAの開発に取り組みながら、並行して爆撃機の開発へとシフトします。1956年にはミラージュIV 01が試作機として製作され、試験飛行が行われました。この機体は、複座であるためナビゲーターを搭載し、ミラージュIIIを基にした設計が施されています。

初飛行は1959年6月17日に行われ、6月20日にはパリ・エアショーで一般に初公開されました。試作機はその後、様々な試験を経て1960年には世界記録を樹立し、速度と高高度飛行の性能を証明しました。

主な構造と性能

ミラージュIVはデルタ翼を持ち、胴体には双発のアター9ターボジェットエンジンが搭載されています。最大速度はマッハ2を超えることが可能で、燃料タンクは14,000リットルを収納する能力があります。また、空中給油装置も備え、長距離の運用ができる設計となっています。

機体の内部構造には、超音速飛行に伴う金属の膨張や収縮を考慮した工夫が施されています。操作席は前後に並ぶタンデム型で、胴体下にはレーダーが収められています。各種兵器を搭載するためのステーションも装備されており、核爆弾や通常爆弾を含む様々な武装が可能です。

機体の改良と運用

1959年には、航続力を強化するためのミラージュIV B計画がスタートしましたが、最終的にはミラージュIV Aに統合され、全体の設計が改良されました。1962年には50機が発注され、合計62機が生産され、フランス空軍の核抑止力の要となりました。実戦では1966年に核実験のために使用されただけであり、本格的な戦争に投入されることはありませんでした。

その後、1960年代後半から1990年代にかけて、機体は偵察用途へと転用され、特にミラージュIV Pとして運用されました。この改造型は、空対地巡航ミサイルASMPにも対応し、イラクやコソボでの偵察活動にも使用されました。

退役とその後

ミラージュIVは1996年に核兵器運用の任務をミラージュ2000に譲り、以降は偵察任務に特化しましたが、老朽化が進んだため、2005年には全ての機体が退役しました。ミラージュIVはフランスの核戦力の中核を成し、軍事技術の進化に寄与した重要な機体でした。

主要スペック

• - 全長: 23.49 m
• - 全幅: 11.85 m
• - 全高: 5.65 m
• - 最大速度: マッハ2.2
• - エンジン: スネクマ アター 9K-50×2基

この機体の開発は、当時の技術革新の象徴でもあり、フランスの軍事戦略における重要な一歩となりました。

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