ミラー・オブ・ニュース

『ミラー・オブ・ニュース』

『ミラー・オブ・ニュース』（英語: Mirror of News）は、1925年から1963年にかけてインドのカリンポンで発行されていたチベット語の新聞です。この新聞は、当初は主にチベット地域内に流通していましたが、時間が経つにつれて世界中に購読者を持つようになりました。創設者であり発行者でもあるゲルガン・タルチンは、記者としても編集者としても活動し、様々な国際的なニュースをチベット語に翻訳して提供しました。

歴史の沿革

創刊の背景

『ミラー・オブ・ニュース』は、インドの西ベンガル州カリンポンで1925年に創刊されました。この新聞は、同じくチベット語で発行されていた『The Ladakh Journal』の後に登場し、歴史上2番目に古いチベット語の新聞とされています。創立者のゲルガン・ドルジェ・タルチンは、1880年代に生まれたチベット人のキリスト教徒であり、カリンポンで牧師を務めながらこの新聞を発行しました。

刊行頻度と最初の発行

『ミラー・オブ・ニュース』は月刊誌として刊行され、1925年10月には初めての号が発行されました。その号は、当時ラサにいた彼の友人たちに50部印刷され、特にダライ・ラマ13世に送られました。ダライ・ラマ13世からは発行を続けるよう激励され、彼自身も熱心な読者であったといわれています。

ゲルガン・タルチンの役割

ゲルガン・タルチンは、記者、編集長、発行人の3役を兼務し、様々なメディアからニュースを選択し、それをチベット語に翻訳していました。彼の目標は、チベット人を現代の世界に触れさせ、外部の視点を持たせることで、チベットの発展を促進することでした。新聞では、辛亥革命や第二次世界大戦、インドの独立運動に関する出来事を取り上げ、チベットにおけるさまざまなニュースを報道しました。

影響とその後

『ミラー・オブ・ニュース』は、その発行部数は限られていましたが、チベットの支配層や改革派に対して大きな影響を与えることになりました。タルチンは、カリンポンを拠点として様々な人物と接触し、特に国の近代化を目指す改革者たちに支持されました。また、彼は日本政府のスパイとしての役割を果たすなど、国際的な政治情勢にも関与していました。

1950年代には中国共産党が、彼の新聞を買収し、内容を操ろうとしたエピソードもありますが、タルチンはそれを拒否しました。彼は依然として中国によるチベットへの圧政や人権侵害に関する報道を続けました。

僧院への攻撃

特に1949年から1950年にかけての中国軍侵攻の最中には、チベットの僧院に対する攻撃が激化しました。タルチンは、新聞を通じてその実態を報じ、数多くの僧侶や民間人の死傷者数を詳細に伝えました。『ミラー・オブ・ニュース』1957年7月1日号では、僧院への攻撃により、多くの僧侶が亡くなっていることが報告され、状況の深刻さを世に伝えました。

終焉とその後

1963年に『ミラー・オブ・ニュース』は発行を停止します。この年、亡命したチベット人たちが新たに『Tibetan Freedom』という新聞を発行し始め、タルチン自身の高齢による資料の確保や継続的な運営の難しさがその理由でした。タルチンは1976年に死去しましたが、彼が残した影響は今でも多くの人に記憶されています。カリンポンには『ミラー・オブ・ニュース』が拠点としていた建物の一部が残り、記念に標識が掲げられています。

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