ミリタリーミニチュアシリーズ

タミヤのミリタリーミニチュアシリーズ（MMシリーズ）は、1968年の発足以来、AFV（装甲戦闘車輌）やフィギュアを中心に展開するプラモデルのシリーズです。このシリーズの登場と発展は、1/35スケール|1_35スケールを戦車模型の標準的なスケールとして世界的に定着させる大きな役割を果たしました。また、2003年からは1/48スケール|1_48スケールにも製品の幅を広げ、より多くのモデラーに支持されています。MMシリーズは、その略称としても広く知られています。

1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ

1/35 MMシリーズは、当初「1/35戦車シリーズ」のアクセサリー的な存在としてスタートしました。1968年9月に発売されたシリーズNo.1「ドイツ戦車兵セット」を皮切りに、No.3「シュビムワーゲン」でソフトスキン（非装甲車両）が初めてシリーズに加わりました。そしてNo.9「ドイツII号戦車」では、モーターライズ機構を廃止し、代わりに歩兵フィギュアを追加することで、従来の「動かして楽しむ」戦車模型の概念に新たな方向性を示しました。これにより、ディスプレイモデルとしての楽しみ方が確立され、以後のシリーズ展開に大きな影響を与えました。

1972年にはシリーズNo.17「88ミリ砲Flak36/37」が発売され、精密さ、ボリューム、そして組み立てやすさで、他のミリタリーモデルとは一線を画す存在となりました。しかし、1980年代に入ると、ベトナム戦争の終結やスーパーカーブーム、アニメブームなどの影響を受け、ミリタリーモデルの人気は低迷期を迎えます。この時期は「ミリタリー冬の時代」とも呼ばれました。

しかし、タミヤは市場調査を重ね、限定生産品などを通じて需要を喚起し、1989年12月にはNo.146「タイガーI後期生産型」を発売します。このキットは、従来のモーターライズキットとの兼ね合いから制約があったスケールや精密感を大幅に向上させました。特に、それまでポリプロピレン製だった履帯を、プラスチック製の組み立て式に変更したことは、大きな転換点となりました。ただし、組み立て式履帯は初心者には難易度が高かったため、後のキットでは別売りとなりました。また、従来のベルト式履帯も材質が変更され、接着や塗装が可能になりました。しかし、この新素材は劣化しやすく、数年で破損してしまうという問題点も抱えていました。近年の製品では、ベルト式と部分連結式が同梱されるようになり、選択肢が増えています。

タイガーI以降のシリーズは「新MMシリーズ」とも呼ばれ、以前は模型製作から離れていた「出戻りモデラー」を呼び戻すきっかけとなりました。現在では、ドラゴンなどの精密な製品や、中国・台湾メーカーとの競争が激化していますが、タミヤは常に品質向上を目指し、新製品の開発を続けています。

近年では、アベールなどの他社製オプションパーツを同梱したキットや、フィリピン工場で生産された塗装済み完成品も登場しています。また、フィギュアの原型制作も、3Dスキャン技術を用いたデジタル原型に移行し、より精密でリアルな表現が可能になっています。

以前の1/35戦車シリーズには、モーター走行を前提とした設計のため、実際には1/32相当のスケールで発売されたものもありましたが、これらは一部を除いてMMシリーズには含まれていません。

1/48 ミリタリーミニチュアシリーズ

1/48 MMシリーズは、海洋堂のワールドタンクミュージアムやレベル・ドラゴンの1/72モデルなどのミニスケールモデルの人気が高まる中で、2003年10月にシリーズNo.1「Pkw.K1 キューベルワーゲン82型」としてスタートしました。当初は「1/48ミリタリーミニチュアビークル（MMV）」と名付けられ、小型車両を中心に展開していました。これは、同スケールの航空機モデルとの組み合わせを想定したものでした。

シリーズ4作目の「タイガーI初期型」以降、大戦アイテムのリリースが継続され、フィギュアセットや情景用アクセサリーも発売されるなど、一大シリーズとして成長しています。サードパーティー製のオプションパーツも充実しており、モデラーのニーズに応える製品展開となっています。

シリーズの特徴として、一部の車両にはダイキャスト製シャーシが、装軌車両にはプラスチック製組立式キャタピラが採用されています。ダイキャスト製パーツは、タミヤが「手にした時の重量感」を演出するために導入していますが、接着に瞬間接着剤が必要であったり、加工が難しいという問題点がありました。特に、サスペンションアームが一体成型されているため、不整地ベースへの接地加工が困難であるという批判も寄せられました。これらの問題点を踏まえ、後にプラスチック製車体にダイキャスト製ウェイトを仕込む方式に改められています。

一方、組立式キャタピラは、組み立てやすさを考慮し、直線部分を一体化するなど工夫が凝らされています。

タミヤは、1970年代にも1/48戦車シリーズを展開していましたが、当時の製品はシングルモーターライズ（直進のみ）のトイ的な性格が強いものでした。後に、ミニ四駆の技術を応用したABS樹脂製ギアボックスや共通シャーシを採用したリモコン版が発売され、現在では一部が完成品として販売されています。

タミヤが1/48MMシリーズの開発に注力している理由は、以下の通りです。

1/35スケール|1_35スケールでは、海外メーカーとの競争が激化しており、組み立てやすさをアピールしやすい1/48スケール|1_48スケールにシフトすることで、価格を抑えつつ、より多くのユーザーを獲得できる。
現代の住宅事情を考慮し、コンパクトなサイズで展開することで、飛行機モデルのスタンダードスケールとの統合を視野に入れている。
塗装済み完成品にも適したサイズであり、ダイキャストシャーシや組立式キャタピラは、完成品販売を見越した措置であると考えられる。

1/48スケール|1_48スケールのアイテムの開発・生産は、フィリピン工場で行われており、従来の1/35シリーズとは異なる体制で展開しています。したがって、1/48の開発が1/35の停滞を招くことはないとされています。

現在のラインナップは大戦物が中心ですが、2008年8月には現用アメリカ陸軍の多用途装輪車がF-117とのセットで発売され、2009年10月にはカーゴタイプが1/48MM初の現用アイテムとして登場しました。2016年8月には、シリーズ初の現用戦車である陸上自衛隊 10式戦車が発売され、今後の展開が注目されています。

関連項目

機甲師団シリーズ
* ミニボックスEシリーズ

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