ミルガ・グラジニーテ＝ティーラ

ミルガ・グラジニーテ＝ティーラ（Mirga Gražinytė-Tyla）は、1986年8月29日にリトアニアの首都ヴィリニュスで生まれた女性指揮者です。

彼女は若くして音楽の道を志し、ヴィリニュスにある国立チョルリョーニス芸術学校で基礎を学びました。その後、国際的な視野を広げるため、オーストリアのグラーツ芸術大学、スイスのチューリヒ音楽院、ドイツのライプツィヒ音楽院、そしてイタリアのボローニャ音楽院と、ヨーロッパ各地の著名な教育機関で指揮法を中心に研鑽を積みました。これらの多岐にわたる学びの環境が、彼女の多様なレパートリーと柔軟な音楽解釈の基盤を築いたと言えるでしょう。

プロの指揮者としてのキャリアは、まず歌劇場から始まりました。2011年から2012年にかけてドイツのハイデルベルク市立劇場で第2楽長を務め、実践的な経験を積みました。続いて2013年から2014年には、スイスのベルン歌劇場で第1楽長に昇格し、オペラ作品の指揮において重要な役割を果たしました。これらの歌劇場での経験は、彼女が後のオーケストラ指揮において、ドラマティックな表現力や歌手との連携を重視するスタイルを確立する上で貴重な財産となりました。

2015年からは、彼女のキャリアは一気に国際的な舞台へと広がります。この年、オーストリアのザルツブルク州立劇場の音楽監督に就任すると同時に、アメリカ合衆国のロサンジェルス・フィルハーモニックのアシスタント指揮者としても活動を開始しました。異なる大陸の主要なポストを兼任することは、彼女の才能に対する期待の大きさを物語っています。

特に重要な転機となったのは、イギリスの名門オーケストラであるバーミンガム市交響楽団（CBSO）との関係です。2015年7月には、同楽団の首席客演指揮者に指名され、その実力がイギリスでも高く評価されました。そして翌年の2016年9月には、CBSOの第12代音楽監督に就任しました。これは、かつてサー・サイモン・ラトルやアンドリス・ネルソンスといった世界的な指揮者が務めたポストであり、彼女がその地位に就いたことは、指揮者としての地位を確固たるものにしたと言えます。彼女は2022年まで約6年間にわたり音楽監督としてCBSOを率い、数多くのコンサートや録音を通じて楽団の芸術性を高めました。

CBSO音楽監督時代の特筆すべき活動として、2016年8月27日にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで開催されたBBCプロムスへの初登場が挙げられます。彼女は自身の「手兵」となったCBSOを率いてこの権威ある音楽祭に登場し、聴衆から熱狂的な支持を受けました。これは、彼女が若手ながらも世界の主要な音楽祭で成功を収める実力を持っていることを広く知らしめる機会となりました。

ミルガ・グラジニーテ＝ティーラは、そのエネルギッシュで情熱的な指揮ぶりと、現代音楽を含む幅広いレパートリーへの深い理解で知られています。バーミンガム市交響楽団の音楽監督を退任した後も、彼女は世界各国の主要オーケストラに客演し、活動を続けており、今後も現代クラシック音楽界を牽引していく存在として期待が寄せられています。

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