ミルチャ2世

ミルチャ2世について

ミルチャ2世（Mircea II、1428年 - 1447年）は、ワラキアの短命の領主で、父ヴラド2世の長男として知られています。彼は、強力な支持者を持ちながらも、父とオスマン帝国との複雑な関係に翻弄され、結果的に悲劇的な運命へと向かいました。また、彼は有名なヴラド3世（通称：串刺し公）やラドゥ3世の兄でもあります。彼の名前は、祖父であるミルチャ1世老公に由来しています。

ワラキアの公位を巡る権力闘争

1436年、ミルチャ2世の父であるヴラド2世は、異母兄弟アレクサンドル1世を追放し、ワラキアの公位に就任しました。その後、1442年にはヴラド2世がオスマン帝国に向かっていたため、ミルチャ2世が地方の統治を任されました。父がオスマン帝国と対立していたため、ミルチャ2世はフニャディ・ヤーノシュの敵とみなされることになります。

1443年にフニャディはワラキアに進攻し、ミルチャ2世の父の軍を打ち破ります。その後、父はオスマン帝国に協力を求め、ミルチャ2世は一時逃亡しますが、強力な支持を得て、逃げた状態でも軍を維持していました。

フニャディはバサラブ2世を新たな公に任命しましたが、親オスマンだったヴラド2世はすぐに公位を取り戻します。ミルチャ2世は父の公位復帰を支援しつつも、父がオスマン帝国との妥協を図る姿勢には懸念を抱いていました。ヴラド2世は、毎年の朝貢と人質としての息子たちをオスマン帝国に提供する条約を結んでいたのです。

1444年10月には、ヴラド2世がニコポリス近郊に到着し、ポーランドとハンガリーの王ヴワディスワフ3世と接触しましたが、彼が説得を受け入れなかったため、ヴラド2世はワラキアに戻ることになります。その際、ミルチャ2世は4000人の機甲部隊を指揮し、1444年11月10日のヴァルナの戦いに参加しました。しかし、戦闘は敗北に終わり、ミルチャ2世は残った部隊を率いてドナウ川を渡ることになります。

1445年には、ミルチャ2世はジュルジュの要塞を奪還する成功を収めますが、父ヴラド2世はオスマン帝国との条約によって、安定を図るために要塞の支配を認めていました。

最期とその後

1447年、フニャディは再度ワラキアに攻撃を行い、ヴラド2世とミルチャ2世を支援する軍を再び破ります。この結果、ヴラド2世は追放され、ミルチャ2世も捕獲されてしまいます。彼はトゥルゴヴィシュテのボイヤールに捕らえられ、恐ろしい方法で失明させられ生き埋めとなります。その直後に父も捕らえられ、殺害され、ダネシュティ家のヴラディスラフ2世が新たな公位に就くことになりました。

間もなくオスマン帝国が推す弟のヴラド3世が公位に就きますが、わずか2ヶ月でヴラディスラヴ2世が奪還します。ヴラド3世は1456年に再び公となり、オスマン帝国との戦争を開始しました。この時期に彼は恐怖政治を実施し、後にブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』の着想を与える存在となりました。加えて、ヴラド3世は自身の父と兄を死に至らしめたボイヤールに対する復讐を果たすことになります。

もう一度検索