ミレーヌ・ドモンジョ

ミレーヌ・ドモンジョ

フランス出身の女優、ミレーヌ・ドモンジョ（Mylène Demongeot）は、1935年9月29日にニースで生まれました。本名をマリ＝エレーヌ・ドモンジョといい、その輝かしいキャリアは、17歳で映画の世界に足を踏み入れたことから始まります。

彼女が特に大きな注目を集めたのは、アーサー・ミラーの戯曲を映画化したレイモン・ルーロー監督作『サレムの魔女』（1956年）での演技です。この作品で邪悪な少女アビゲイル・ウィリアムズを演じたことで一躍脚光を浴び、翌1957年にはカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭で最優秀女優賞を受賞するという栄誉に輝きました。さらに1958年には、英国アカデミー賞の有望若手女優賞にノミネートされるなど、国際的な評価を確立していきます。

その後も彼女は、『悲しみよこんにちは』『女は一回勝負する』（1957年）、『お嬢さん、お手やわらかに!』（1958年）、『黙って抱いて』『狂った夜』『上と下』（1959年）、『ローマの恋』『全戦艦を撃沈せよ』など、フランス国内外で多くの人気作品に出演を重ねました。特に、日本でもこれらの作品を通じて多くのファンを獲得し、人気を博しました。1960年代に入ると、ヒットシリーズとなった『ファントマ』シリーズにも出演するなど、その存在感を示し続けます。

私生活では、作家ジョルジュ・シムノンの息子である映画監督のマルク・シムノンと結婚しました。再婚後の出産を経て、活動のペースを調整する時期もありましたが、映画に加え、舞台やテレビドラマにも活躍の場を広げました。夫であるマルク・シムノンが演出したテレビ映画には、度々出演しています。

ミレーヌ・ドモンジョは、生涯を通じて日本とも深い繋がりを持ちました。1959年6月には、第2回「フランス映画祭」に参加するために初来日を果たし、その後もゆうばり国際ファンタスティック映画祭のゲストとして招かれるなど、複数回日本を訪れています。テレビ番組では、1963年12月24日放送の「スター千一夜」に出演したことも記録されています。また、日本の映画作品にも出演しており、『ヨーロッパ特急』や『東京タワー』で見ることができます。

さらに特筆すべきは、タツノコプロダクション制作の人気アニメーション番組『ヤッターマン』に登場する魅力的な悪女キャラクター、「ドロンジョ」のモデルの一人であるとされている点です。皮肉なことに、ドロンジョの声優を務めた小原乃梨子氏は、『お嬢さん、お手やわらかに!』をはじめとするいくつかのドモンジョ出演作品で、彼女の日本語吹き替えを担当していました。この偶然の一致は、日本のファンにとって特別なエピソードとして語られています。

晩年は長く病を患いましたが、女優として、また多くの人々に愛される存在として、その生涯を全うしました。2022年12月1日、パリの病院にて87歳で逝去しました。ミレーヌ・ドモンジョは、その美貌と確かな演技力で、フランス映画の黄金期を彩っただけでなく、遠く離れた日本でも多くの人々の心に深く刻まれる存在であり続けました。彼女の遺した功績は、今もなお多くの作品を通じて私たちの記憶に生き続けています。

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