ミロシュ・サードロ

ミロシュ・サードロ

チェコの誇る偉大なチェリスト、ミロシュ・サードロ（Miloš Sádlo, 1912年4月13日 - 2003年10月14日）は、本名をミロスラフ・ザートヴルスキー（Miloslav Zátvrzský）といった。現在のチェコ共和国、プラハでこの世に生を受けた彼は、その生涯を通じてチェロ芸術の発展に多大な貢献をなした人物である。

教育とキャリアの出発点

サードロは1912年にプラハで誕生した。音楽への道を志し、1928年にはプラハ音楽院に進学。ここでは高名なチェリストであったカレル・プラヴォスラフ・サードロに師事し、その薫陶を受けた。師との関係は深く、ミロスラフ・ザートヴルスキーは師の名前であるサードロを自身の芸名として使用することを許された。これが、彼の音楽家としての新たな出発点となる。1931年にはプラハ四重奏団にチェロ奏者として加わり、ヴィオラ奏者のラディスラフ・チェルニーから室内楽における重要な知識や技術を学んだ。しかし、この四重奏団の活動は長くは続かず、1933年には解散の時を迎える。

国際舞台での飛躍

四重奏団解散後、サードロはソロ活動へと軸足を移す。1937年は彼のキャリアにおいて転換点となった年である。この年、ヴァイオリニストのヤン・クベリークの代わりにロンドンでの公演に出演する機会を得たサードロは、そこで目覚ましい成功を収める。その演奏は喝采を浴び、彼は一躍国際的な注目を集める存在となった。このロンドン公演を機に、ミロシュ・サードロの名は世界の音楽界に広く知られるようになり、国際的な名声と地位を確固たるものとした。

著名な音楽家との共演

サードロは、20世紀を代表する作曲家や演奏家との共演も多く行った。特に記憶されるべきは、1947年のプラハの春国際音楽祭でのドミートリイ・ショスタコーヴィチとの共演である。作曲家自身との共演は、彼の解釈の深さを示すものであった。また、1950年には不世出のヴァイオリニスト、ダヴィッド・オイストラフと共にヨハネス・ブラームスの二重協奏曲の演奏を披露した。これらの共演は、サードロが同時代の音楽界の巨匠たちと肩を並べる存在であったことを物語っている。

ハイドン協奏曲の「発見」と蘇演

サードロの業績の中でも、特に音楽史に大きな影響を与えたのが、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンのチェロ協奏曲第1番ハ長調 Hob. VIIb:1に関するものである。1961年、プラハで発見されたこの作品の楽譜にサードロは深く関わったとされる。そして翌1962年、彼はこの長らく忘れられていた傑作の復活演奏（蘇演）を行った。この蘇演は音楽界に大きな衝撃を与え、ハイドンのチェロ作品に対する新たな光を当てることとなった。今日ではチェリストの重要なレパートリーとなっているこの協奏曲が、再び演奏されるようになる契機をサードロが作ったのである。

晩年

生涯現役のチェリストとして活動を続けたミロシュ・サードロは、その円熟した演奏で多くの聴衆を魅了し続けた。チェコの音楽教育にも貢献し、後進の指導にもあたった。2003年10月14日、彼の生まれた街であるプラハにて、91年の波乱に富んだ生涯の幕を閉じた。彼の遺した録音は、今もなお多くの人々に愛され続けている。

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