ミンチメル・シャイミーエフ

ミンチメル・シャリーポヴィッチ・シャイミーエフは、1937年1月20日にロシア・ソビエト連邦社会主義共和国、タタール自治ソビエト社会主義共和国のアニャコヴォ村で生まれました。農業協同組合の議長を務めていた家庭で育ち、1959年にはカザン農業大学を卒業しました。

卒業後、「セリホズテフニキ」という農業機械関連組織の地方支部に勤務し、1966年には早くも国家勲章であるレーニン勲章を受章しています。1967年からはソ連共産党タタール州委員会の農業部門で指導的役割を担い、1969年にはタタール共和国の土地改良・水利事業大臣に就任しました。その後、閣僚会議の第一副議長（第一副首相）、党州委員会書記を経て、1985年にはタタール閣僚会議議長（首相）に昇進しました。

1989年にはソ連人民代議員に選出されるとともに、ソ連共産党タタール州委員会の第一書記に就任。翌1990年にはソ連共産党中央委員にも名を連ねました。

ソビエト連邦の解体が近づく中、1990年8月30日にはタタールスタン共和国最高会議議長として主権宣言を行い、1991年6月12日には共和国の初代大統領に選出されました。同年8月に発生したソ連のクーデター未遂事件では、非常事態委員会を支持する立場を取りました。

ソ連崩壊後の1992年、タタールスタンを主権国家と位置づける新憲法案に関する住民投票を実施し、約62%の賛成を得ました。しかし、この住民投票と憲法はロシア連邦の裁判所により違憲と判断されました。シャイミーエフ大統領は、タタールスタンの分離独立を求める急進的な民族主義の動きを抑えつつ、当時のエリツィン大統領率いるロシア連邦政府との間で粘り強い交渉を展開しました。その結果、他のロシア連邦の構成主体に先駆け、1994年2月15日には中央政府との間で権限分割条約を締結することに成功しました。タタールスタンがロシア国内のイスラム教徒人口の約48%を占めているという事情も、彼の交渉力を後押しした要因の一つとされています。

1996年の大統領選挙では対立候補が現れず、97%という圧倒的な得票率で再選されました。1999年のロシア連邦下院選挙では、プリマコフ元首相やルシコフ・モスクワ市長らと共に政治ブロック「祖国・全ロシア」を結成し、エリツィン政権に対抗しましたが、プーチン大統領の登場と「統一」党の躍進により、「祖国・全ロシア」は「統一」と統合され、新与党「統一ロシア」が誕生しました。シャイミーエフ氏は、ルシコフ氏らと共に「統一ロシア」の最高会議共同議長に就任しています。

2000年にウラジーミル・プーチン氏が大統領に就任し、中央集権化を進める中で、経験豊富なシャイミーエフ氏はプーチン氏との直接的な対立を避けつつ、タタールスタンが持つ特権の維持に努めました。ロシア連邦憲法およびタタールスタン共和国憲法では、地方首長の3選は原則禁止されていましたが、プーチン大統領はタタールスタンに対し特例を認め、シャイミーエフ氏は2001年3月に3選、さらに2005年3月には4選を果たしました。彼の指導の下、タタールスタンはモスクワに次ぐ総合経済指標でロシア連邦主体として2位となり、カザン地下鉄の建設やカザン・クレムリンの世界遺産登録に向けた再建など、大規模プロジェクトを成功させ、共和国内で絶大な支持を得ました。

2010年、ドミートリー・メドヴェージェフ氏が大統領に就任すると、シャイミーエフ氏は次世代への継承を理由に、ルスタム・ミンニハノフ氏を後継者として推薦し、タタールスタン大統領を辞任しました。その後は国家顧問に就任し、共和国への貢献を続けました。

彼の功績は国内外で高く評価されており、ロシア連邦技術科学アカデミー会員、全世界騎士団連盟国際議会幹部会名誉議員など、多くの名誉ある肩書きを持っています。これまでに労働赤旗勲章、十月革命勲章、人民友好勲章、二等「祖国に対する貢献に対する」勲章など、数々の国家勲章を受章しています。また、モスクワ総主教アレクシイ2世からのラドネジの聖セルギイ勲章や、長年のイスラム社会への貢献に対するキング・ファイサル国際賞イスラーム奉仕部門の受賞など、宗教分野からの評価も高いです。

国際的な認知も得ており、1998年にはケンブリッジ国際伝記センターから「今年の人」に選ばれ、2001年には文化・歴史遺産保護への貢献によりユネスコからアヴィツェンナ銀メダルを授与されました。さらに、国際慈善財団からのルビー十字章や、ロシア連邦とユネスコ間の協力への貢献に対する記念メダルも受章しています。

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