ムカゴニンジン

ムカゴニンジン：特徴と生態

ムカゴニンジン（学名: Sium ninsi）は、セリ科に属する多年草です。その名の通り、葉の付け根にできるムカゴ（珠芽）と、朝鮮人参に似た太い根が特徴です。草丈は30～100cmに成長し、直立した茎は多数枝分かれします。葉は互生し、下部の葉は奇数羽状複葉、上部の葉は3出複葉となります。小葉は円形から細長い線形へと変化し、縁にはギザギザ（鋸歯）があります。葉柄の基部は茎を抱くように広がります。

花期は9～10月。茎の先端に小さな白い花を多数つけた複散形花序を付けます。花弁は5枚で、先端が内側にわずかに曲がります。花序の下には小さな苞片が垂れ下がります。果実は長さ約2mmの卵球形で、2つの分果からなり、断面は五角形です。

ムカゴニンジンは、秋になると葉の付け根にムカゴを形成します。このムカゴは発芽能力を持っており、親株から離れて新たな個体として成長します。中には、親株に付いたまま発芽するものも見られます。

分布と生育環境

ムカゴニンジンは、北海道から九州まで日本各地に広く分布しています。日当たりの良い湿地、休耕田、池や沼の周辺など、湿った環境を好みます。水中に生育することもあります。国外では、朝鮮半島や中国大陸にも分布が確認されています。

名前と利用

和名の「ムカゴニンジン」は、「ムカゴ（珠芽）ができる人参」という意味です。太い根は、朝鮮人参に似ていることから名付けられました。1856年の『草木図説』には、ムカゴの形成と根の形状について詳細な記述があります。

ムカゴニンジンの太い根は食用にできます。ヨーロッパでは、古くから根を食用とするため栽培されてきました。

近縁種：タニミツバ

ムカゴニンジンと近縁の種に、タニミツバ（Sium serra）があります。タニミツバはムカゴニンジンと同様にセリ科に属しますが、ムカゴはできません。茎は中空で無毛、草丈は60～80cmになります。葉はムカゴニンジンより大きく、下部の葉は奇数羽状複葉、上部の葉は3出複葉です。また、生育環境も異なり、タニミツバは山地の谷間の木陰の水辺に生育し、日本固有種です。

まとめ

ムカゴニンジンは、ムカゴと太い根が特徴的なセリ科の多年草です。湿地や水辺に生育し、食用にも利用されてきました。近縁種であるタニミツバとは、ムカゴの有無や生育環境、葉の形などで区別できます。日本の各地で見られる身近な植物ですが、その生態や特徴を理解することで、自然への関心がより一層深まることでしょう。 本種に関するより詳細な情報は、参考文献に挙げた植物図鑑などを参照ください。

参考文献

北村四郎・村田源著『原色日本植物図鑑・草本編II（改訂53刷）』、1984年、保育社
橋本郁三著『食べられる野生植物大事典（草本・木本・シダ）』、2007年、柏書房
加藤雅啓・海老原淳編著『日本の固有植物』、2011年、東海大学出版会
林弥栄監修、門田裕一改訂版監修、平野隆久写真『山溪ハンディ図鑑1 野に咲く花（増補改訂新版）』、2013年、山と溪谷社
牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 5』、2017年、平凡社
米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名－学名インデックス」（YList）
飯沼慾斎『草木図説』

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