ムハンマド・アリー朝

ムハンマド・アリー朝の歴史

ムハンマド・アリー朝（ムハンマド・アリーちょう）は、19世紀初めから約150年間、エジプトを支配した王朝である。1780年代半ばから1830年代は、特にムハンマド・アリーの時代として知られ、彼はこの王朝を実質的に成立させた。また、この時期のエジプトはオスマン帝国の一部ではあったが、半ば独立した地域でもあった。

創始者ムハンマド・アリーの台頭

ムハンマド・アリーは、カヴァラという今のギリシャの港町で誕生し、軍司令官としてのキャリアを持つ商人の子供だった。彼は、ナポレオン・ボナパルトが率いるフランス軍のエジプト侵攻に対抗するため、オスマン帝国が派遣したアルバニア人軍に参加した。彼の努力により、1805年にエジプトの総督に推挙され、オスマン帝国の名の下にエジプトの実権を握ることとなった。

ムハンマド・アリーは、マムルークと呼ばれる在地の権力者たちを打ち破り、エジプトの支配権を強固にした。彼の治世下で、エジプトは近代化政策を推進し、特に軍隊の近代化と農業の国有化を行った。これにより、輸出向け農業が振興され、工業化も進められるなど、エジプトの国力は急速に増強された。

外交と戦争

ムハンマド・アリーは、1818年にはワッハーブ派を滅ぼし、1820年からスーダンに侵攻した。1821年にはギリシャ独立戦争が勃発し、オスマン帝国はエジプト軍の支援を求めたが、ナヴァリノの海戦における敗北は顕著な犠牲を伴った。戦争後、彼はオスマン帝国に対してシリア地方の行政権を要求したが受け入れられず、1830年代には二度のエジプト・トルコ戦争を起こした。

植民地化とその影響

エジプトの経済は、19世紀半ばに綿花の生産によって繁栄を極めた。しかし、依存のあまり、外国の景気変動に響くこととなり、1870年代にはアメリカ産の綿花の流入により国際価格が下落、エジプト経済は深刻な打撃を受けた。この時期、債務が増加し、財政破綻が露呈。その結果、1881年にウラービー革命が発生し、エジプト国内の民族運動が活性化したが、最終的には1882年にイギリス軍が上陸し、国内の政権を転覆させることに成功した。

立憲君主制とその限界

1914年には第一次世界大戦の影響でエジプトはイギリスの保護国となり、1919年には大規模な独立運動が起こったが、完全な独立には至らず、1922年にイギリスは名目上の独立を認めた。その後、ムハンマド・アリー朝は立憲君主制に移行し、国王の下で営まれる国政は国民運動と王党派の間の対立によって揺れ動いた。

崩壊と革命

1948年の第一次中東戦争での敗北がきっかけとなり、王制に対する支持は失われ、エジプト国内ではアラブ民族主義やイスラム主義の動きが強まった。これを受け、1952年には自由将校団がクーデターを起こし、ムハンマド・アリー朝を廃止、エジプトは共和制に移行した。

まとめ

ムハンマド・アリー朝は、改革や近代化を試みる一方で、外部勢力の影響を受け続け、最終的に国家制度の転換に至った歴史的な王朝である。その影響は現在のエジプト社会にも残っている。

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