ムヒディン・ヤシン

ムヒディン・ヤシン（Muhyiddin bin Haji Muhammad Yassin）は、1947年5月15日生まれのマレーシアの政治家です。彼は、同国の第8代首相を務めたほか、内務大臣や副首相などの要職を歴任しました。戸籍名はマヒアディン・ビン・ムハンマド・ヤシン（Mahiaddin bin Muhammad Yassin）です。

経歴

ジョホール州出身のムヒディン氏は、2009年にナジブ・ラザク首相が就任した際、内閣発足時に副首相に任命されました。これは、彼の政治家としてのキャリアにおける重要な転換点となりました。

しかし、2015年7月28日、ナジブ首相は内閣改造を発表し、ムヒディン氏は副首相の職を解任されました。この時、アフマド・ザヒド・ハミディ内相が副首相に就任しました。この人事は、マレーシアの政治情勢に大きな波紋を投げかけました。

2020年2月29日、ムヒディン氏は前首相のマハティール・ビン・モハマドを抑え、マレーシア国王のアブドゥラから第8代マレーシア首相に任命されました。翌3月1日に正式に就任し、マレーシアの政治を牽引する立場となりました。

しかし、ムヒディン氏の首相としての道のりは決して平坦ではありませんでした。新型コロナウイルス感染症への対応の遅れや不十分さが国民からの大きな批判を浴び、連立与党からの離反が相次ぎました。その結果、下院で過半数を失い、2021年8月16日にアブドゥラ国王に内閣総辞職を申し出て了承されました。同年8月21日、副首相であったイスマイル・サブリ・ヤアコブが新首相に就任したことに伴い、ムヒディン氏は首相の座を退きました。

退任後、2021年9月4日には、マレーシアのモハド・ズキ・アリ内閣官房長官から、コロナ禍からの脱却を主導する「国家回復評議会」の議長に指名されたことが発表されました。この任命はアブドラ国王の承認を得たものであり、ムヒディン氏の政治的な影響力が依然として大きいことを示していました。

しかし、2023年3月9日、ムヒディン氏は新型コロナウイルス対策事業を巡る汚職容疑で汚職対策委員会に逮捕されるという衝撃的な事態に見舞われました。即日保釈されたものの、10日には職権乱用など6件の罪で起訴されました。マレーシアで首相経験者が汚職で起訴されるのは、2009年から2018年まで首相を務めたナジブ氏以来、2人目の事例となりました。この事件は、マレーシアの政治における汚職問題の深刻さを改めて浮き彫りにしました。

ムヒディン・ヤシン氏は、マレーシアの政治史において、重要な役割を果たした人物の一人です。彼の政治家としてのキャリアは、栄光と挫折、そして汚職疑惑という、複雑な要素が絡み合っています。今後の彼の動向は、マレーシアの政治に大きな影響を与えると考えられます。

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