ムルシリ1世

ムルシリ1世

ムルシリ1世（生年不詳 - 紀元前1530年頃）は、ヒッタイト王国の偉大な王であり、その治世は多くの謎に包まれています。彼はアナトリアから遠く離れたバビロンへ侵攻し、バビロン第1王朝を滅ぼしたことで歴史に名を刻みました。

生涯

ムルシリ1世は、前王ハットゥシリ1世の孫にあたります。ハットゥシリ1世は、息子たちの謀反を未然に防ぐため、貴族会議を開き、ムルシリ1世を後継者とすることを認めさせました。ハットゥシリ1世の死後、若くして王位を継承したムルシリ1世は、周辺諸国との戦争に積極的に関わりました。

東方では、タウルス山脈とユーフラテス川に挟まれた地域（キズワトナ、後のキリキア地方）を征服し、南方進出の足掛かりを築きました。また、前王からのシリア方面への拡大政策を受け継ぎ、ヤムハド王国のハラプ市を破壊し、シリアにおけるヒッタイトの勢力圏を拡大しました。

バビロン遠征

ムルシリ1世の最も有名な功績は、メソポタミアへの遠征です。彼は弱体化していたバビロン第1王朝を攻撃し、紀元前1531年頃にバビロン王サムス・ディターナを打ち破り、バビロン市を破壊しました。しかし、バビロンを占領することなく、戦利品を得て撤退しています。

この遠征の目的は明確には分かっていません。ヒッタイト側にもバビロニア側にも記録が少なく、「ムルシリ1世がバビロンを破壊し、捕虜と戦利品をハットゥシャに運んだ」という記述が残るのみです。しかし、この遠征がヒッタイトの威信を高めたことは疑いありません。一方で、バビロニアには権力の空白が生じ、カッシート人が支配する時代が400年続くことになります。

暗殺

バビロン遠征中、本国ではムルシリ1世の義兄弟であるハンティリがクーデターを企てていました。帰国後、ムルシリ1世はすぐに暗殺され、王位を奪われました。これは、ムルシリ1世の即位を快く思わない貴族が多かったためだと推測されています。

ムルシリ1世はバビロン遠征を成功させた偉大な王として知られていますが、その治世の詳細は謎に包まれています。

外部リンク

* Reign of Mursili I（英語）

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