ムーたち

榎本俊二『ムーたち』解説

『ムーたち』は、漫画家・榎本俊二が「モーニング」（講談社）にて2006年から2007年にかけて連載した漫画作品です。全2巻の単行本が刊行されています。

概要

本作は、1話完結型の不条理漫画であり、前作『えの素』と似た日常風景を舞台としていますが、エログロ表現は控えめになっています。哲学や認知科学といったテーマを基に、独特な世界観が展開されます。各話のタイトルは哲学的なテーマを示唆しており、中にはフランスの哲学者ロジェ・カイヨワの著作からの引用も見られます。

副題は「a man keeps fighting for the family!!」（男は家族の為に戦い続ける！）。当初のタイトルは『ムーさん』でしたが、同名作品の存在により『ムーたち』に改題されました。

登場人物

虚山無夫（むなやま むーお）
通称「ムー夫」。8歳の小学生で、人参とさつまいもが苦手で幽霊が怖いという、子供らしい一面を持っています。
虚山実（むなやま みのる）
ムー夫の父。スキンヘッドで首と肩がないという独特な外見を持ち、一コマごとに顔の描写や体型が変化します。規理野が登場するエピソードでは、「ゴッド・ブレス・ユー」と声をかけるのがお決まりです。物事に対する考察をムー夫に語りますが、言い負かされることもしばしば。
虚山空子（むなやま そらこ）
ムー夫の母。緑色の目と髪が特徴的です。
先生
ムー夫たちの担任教師。授業では生徒に様々な事象について考察を求めますが、平凡な答えは許容しません。殿上眉のような眉毛が特徴です。
規理野視組（きりの しくみ）
統計を用いて一見無関係な事象を関連付けようと試みる人物。統計から未来を予知したり、宇宙を構築する絶対法則を見つけ出すことを目指しています。
白身川さとし（しろみかわ さとし）
ムー夫のクラスメイト。
風見鶏
ムー夫のクラスメイトで野球部員。相手チームのヤジであっても、自分への命令には必ず従います。
キヨシ
物事を遠回しに伝える人物。実の同僚です。
セカンド自分
何かに夢中になっている自分を客観的に意識する、もう一人の自分を擬人化した存在。後頭部に同じ形の頭部が浮かんでいる状態で表現され、本体の行動に注意不足を引き起こします。
サード自分
セカンド自分が考え事に夢中になっている時に現れる三人目の自分。セカンド自分よりも色が黒く、同様にフォース自分という色の薄い存在も確認されています。
擬音
作中では、様々な擬音が「○○リ」という形で表現されます。（例：「パタリ」、「ピチャリ」、「むくり」など）

番外編

『週刊モーニング』に掲載された「えの素トリビュート」では、『ムーたち』のキャラクターが『えの素』風に描かれた番外編が掲載されました。また、『えの素』のキャラクターが『ムーたち』風に描かれるなど、クロスオーバーな展開も見られました。これらの番外編は単行本には収録されていませんでしたが、『えの素完全版・下』に収録されています。

単行本情報

1巻：2006年12月22日発行、ISBN 4063725707
* 2巻：2007年10月23日発行、ISBN 9784063726398（解説：斎藤環）

『ムーたち』は、シュールな笑いの中に哲学的な深みを感じさせる、榎本俊二ならではの独特な世界観が魅力の作品です。

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