ムーディ・ブルー

エルヴィス・プレスリーのラストアルバム「ムーディ・ブルー」

「ムーディ・ブルー」は、エルヴィス・プレスリーが1977年にリリースしたアルバムであり、同名の楽曲も収録されています。このアルバムは、彼のキャリア晩年の作品であり、スタジオ録音とライブ録音が混在しているのが特徴です。

レコーディングの軌跡

アルバムには、1977年4月に行われたミシガン州でのライブ録音から、「アンチェインド・メロディ」、「愛しい貴方」、「リトル・ダーリン」の3曲が収録されています。また、「レット・ミー・ビー・ゼア」は、以前の「ライヴ・イン・メンフィス」に収録されたものと同じ音源が使用されています。

タイトル曲の「ムーディ・ブルー」と「何でもないのに」は、1976年2月に行われたジャングル・ルーム・セッションでの録音です。1976年10月には、「ウェイ・ダウン」、「プレッシング・マイ・ラヴ」、「イッツ・イージー・フォー・ユー」が録音されました。

さらに10月30日には、「浮気はやめなよ」とジェリー・シェフ作曲の「There's A Fire Down Below」が録音されました。翌31日の早朝にセッションが終了した後、エルヴィスは同日の夜から翌朝にかけて「浮気はやめなよ」のボーカルを録音し、これがエルヴィス最後のスタジオ録音となりました。

1977年1月にはナッシュビルでのレコーディングセッションが予定されていましたが、エルヴィスはキャンセルし何も録音せず、代わりにミュージシャンたちが「ウェイ・ダウン」と「プレッシング・マイ・ラヴ」のリズムトラックを再録音しました。同年2月には、グレイスランドに仮設スタジオが設けられましたが、最終的にレコーディングは行われませんでした。これはエルヴィスがスタジオ録音を試みた最後の機会となりました。

アップグレード版とレアなエピソード

2000年には、アルバムのアップグレード版がリリースされ、「メンフィスより愛をこめて」から10曲がボーナストラックとして追加されました。ただし、「ムーディ・ブルー」に収録されていた「レット・ミー・ビー・ゼア」は外されています。

また、1977年2月20日のコンサートでエルヴィスは「ムーディ・ブルー」を歌おうとしましたが、キーが高すぎて歌えませんでした。翌日のコンサートで初めて歌うことに成功し、これが唯一のライブ演奏となりました。

オリビア・ニュートン＝ジョンの「愛しい貴方」をエルヴィスがカバーしたことに対し、オリビアは「私の作品が”キング”によって歌われたなんて夢のようだ」とコメントしています。

レコード盤の希少性

アルバムの初回限定25万枚は青いビニール盤でプレスされ、その後黒いビニール盤に切り替わりました。エルヴィスの死後、再び青いビニール盤がプレスされるようになったため、黒いビニール盤はコレクターズアイテムとなっています。

RCAインディアナポリス工場では、初回限定の青いビニール盤プレス中に20億枚プレスを達成し、1977年6月26日のコンサート前に記念の盾がエルヴィスに贈られました。この日がエルヴィス最後のコンサートとなりました。

参加ミュージシャン

エルヴィス・プレスリー - ボーカル、ギター、ベース（「Blue Eyes Crying In The Rain」）
J.D.サムナー&スタンプス - バックグラウンドボーカル
キャシー・ウェストモーランド - バックグラウンドボーカル
マーナ・スミス - バックグラウンドボーカル
ザ・スウィート・インスピレーションズ - バックグラウンドボーカル
シェリル・ニールセン - バックグラウンドボーカル
バーゲン・ホワイト - ストリング＆ホーンアレンジ
ジェームズ・バートン - リードギター
ジョン・ウィルキンソン - リズムギター
ジェリー・シェフ - ベース
デヴィッド・ブリッグス - キーボード
ロニー・タット - ドラムス

「ムーディ・ブルー」は、エルヴィスの音楽キャリアの終盤を飾る重要な作品であり、彼の多才な才能と情熱を今に伝えるアルバムと言えるでしょう。

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