ムード歌謡 〜歌姫昭和名曲集

ムード歌謡 〜歌姫昭和名曲集

中森明菜の『ムード歌謡 〜歌姫昭和名曲集』は、彼女のカバー・アルバムであり、2009年6月24日にユニバーサルシグマより発売されました。このアルバムは、彼女の「歌姫シリーズ」の一環であり、過去数年間にわたって展開されてきた作品群の中で特に特別な位置を占めています。今回は昭和の1960年代から1970年代にかけてのムード歌謡に焦点を当てており、多くのリスナーにとって懐かしい楽曲が並びます。

このアルバムは、通常盤、初回限定盤、デジタル・ダウンロードという3形態で同時にリリースされました。特に初回限定盤には特典としてDVDが付属しており、収録された「他人の関係」、「雨の御堂筋」、「伊勢佐木町ブルース」のレコーディング映像に加え、貴重な裏側の様子を見ることができます。

レコーディングは、東京を拠点とするスタジオで行われ、サウンド・プロデューサーには村田陽一が起用されました。彼はアレンジャーとしても参加し、アルバム全体を通じてビッグバンドのアレンジを基にした豊かな音楽体験を創り出しています。このオーケストラに支えられたサウンドが、明菜の力強い歌声と融合し、聴く者の心に深く響く仕上がりとなっています。

アルバムジャケットには、昭和時代を象徴するスナップショットが採用され、京橋図書館や共同通信社提供の画像が使用されています。アートワークは、レコード盤を模したデザインで視覚的にも懐かしさを感じさせるものとなっています。告知ポスターでは、上下が逆さまに配置された中森の姿が印象的で、アート的な要素も取り入れた仕掛けがなされています。

発売に先立つ2008年にはディナーショーツアーでアルバム収録曲が初めて披露され、リリース直後のクリスマスディナーショーでもファンの前に立って歌われました。こうしたパフォーマンスは、アルバムの宣伝にも寄与し、受け入れられる土壌を作ることに成功しました。

アルバムの評価も上々で、音楽批評家からは好意的なレビューが多く寄せられました。たとえば、『CDジャーナル』は「デビュー時の持ち歌かと錯覚するような『絹の靴下』や、ジャズの色合いを持った『非情のライセンス』の新しい解釈が痛快で新鮮」と述べています。また、『47NEWS』のつのはず誠氏も「作品全体が演奏と溶け合った歌唱には、先人たちへの敬意が感じられ、全13曲で39分という短さなのに驚くほどの満足感が得られる」と高評価を与えています。

オリコン週間アルバムチャートでは、2009年7月6日付で30位に初登場し、計3週にわたって同チャートにランクインしました。これにより、中森明菜の音楽的センスと人気を改めて確認する結果となっています。

『ムード歌謡 〜歌姫昭和名曲集』は、ただのカバーアルバムでは片付けられない、昭和の音楽文化を現代に呼び覚ます珠玉の作品であり、彼女のファンはもちろん、昭和の音楽を愛するすべての人に聴いてほしい一枚です。

もう一度検索