ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会

ルノワールの傑作『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』

『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』（Bal du moulin de la Galette）は、印象派の巨匠ルノワールが35歳の時に描いた油彩作品です。1877年の第3回印象派展に出品され、一躍注目を集めました。パリのモンマルトルにあった人気のダンスホール「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」の賑わいを、生き生きと描き出しています。作品は『ムーラン・ド・ラ・ギャレット』とも呼ばれています。

制作の背景

当時ルノワールは、ムーラン・ド・ラ・ギャレットの近くにアトリエを構え、頻繁にダンスホールに通いながら制作に励んでいました。しかし、完成した作品は縦131センチ、横175センチと非常に大きく、アトリエとダンスホールを往復するのは容易ではありませんでした。そこでルノワールは、半分ほどのサイズのキャンバスをダンスホールに持ち込み、そこで下絵となる作品を制作。アトリエに戻ってから、その下絵を元に大きな作品を完成させたと言われています。

モデルとなった人々

『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』には、多くの人物が描かれていますが、そのほとんどがルノワールの友人たちでした。名前が判明している人物もおり、例えば、手前の左側でダンスをしている黒い帽子の男性はキューバの画家カルデナス、そのパートナーは当時ルノワールのお気に入りだったモデルのマルゴです。中央下側のベンチに座っている女性はエステル、その背後にいるのはエステルの姉ジャンヌ。この姉妹は、プロのモデルではありませんでした。また、右側のテーブルに座っている3人の男性のうち、背を向けて姉妹と会話しているのは画家のフラン＝ラミ、その向かい側でタバコをくわえているのが画家のノルベール・グヌット、そしてその右隣でメモを取っているのが批評家リヴィエールです。

二つの作品の運命

『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』には、サイズの異なる2つの作品が存在します。大きい方の作品は現在、オルセー美術館の3階に展示されており、印象派の画家仲間であったギュスターヴ・カイユボットが購入しました。カイユボットの死後、フランス政府に寄贈され、現在に至ります。一方、小さい方の作品は、1990年に日本の実業家、齊藤了英が7800万ドルという当時絵画史上2位の価格で落札しました。しかし、バブル崩壊後、海外へ流出し、現在はスイスのコレクターの手に渡ったと言われています。

2016年には、「ルノワール展」で初来日を果たし、日本の美術ファンを魅了しました。

まとめ

『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』は、ルノワールの才能と、当時のパリの活気溢れる雰囲気を伝える傑作です。オルセー美術館を訪れた際には、ぜひその目で確かめてみてください。

参考文献

• - 千足伸行監修、清水満郎編『週刊・世界の美術館（2）オルセー美術館１』講談社、2000年。
• - 島田信夫監著『まんが印象派の画家たち（1）』美術出版社〈アートコミック〉、1999年。

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