ムーンライト伝説/HEART MOVING

ムーンライト伝説

テレビアニメ「美少女戦士セーラームーン」シリーズのオープニングを飾った主題歌「ムーンライト伝説」は、1992年3月21日にシングルとして初めてリリースされました。この楽曲を歌唱したのは、当時活動していたアイドルグループ「DALI」です。シングルの初期盤には「HEART MOVING」がカップリングとして収録されていましたが、2000年6月21日にはカップリング曲を「乙女のポリシー」に変更して再発売されています。

この楽曲は、「美少女戦士セーラームーン」の初代シリーズ（第1話）から、それに続く「美少女戦士セーラームーンR」（第89話）まで、足掛け2年間にわたりオープニングテーマとして使用され、作品の顔として広く認知されました。

オリジナル版を歌ったDALIは、「アクションズ」というグループから選抜された高橋美鈴、西本麻里、石沢晶、土屋さゆりという4人組のアイドルユニットでした。彼女たちは「ムーンライト伝説」のリリース直後に活動を終了しており、短命ながらも歴史に残る楽曲を手掛けたグループとして記憶されています。DALI解散後、メンバーの高橋と西本は新たに音楽ユニット「MANISH」を結成しました。また、この楽曲のデモ段階の歌唱、いわゆる仮歌は、後にMANISHと同じビーイング系のアーティストとして活動することになる宇徳敬子が担当したことが知られています。

作曲者に関する議論とその決着

「ムーンライト伝説」は、発表から長年にわたりその作曲者について様々な憶測が飛び交いました。特に、KEY WEST CLUBが発表（ただし未発売）していた「夢はマジョリカ・セニョリータ」という楽曲とメロディーが非常に似ていたことが、混乱の一因となりました。この2曲は同じメロディーラインを持つ姉妹曲のような関係でしたが、「ムーンライト伝説」のCDリリースにあたり、メロディーの一部が音程のみ差し替えられるという変更が行われました。

さらに、この過程で「夢はマジョリカ・セニョリータ」の作曲者名義が小諸鉄矢から川島だりあに変更されたことから、「ムーンライト伝説」の真の作曲者は川島だりあではないかという説が長らく語り継がれていました。しかし、2016年には楽曲の編曲を手掛けた池田大介氏が、小諸鉄矢と川島だりあが同一人物であるという説を明確に否定しました。

事態はさらに進み、2021年2月には、音楽プロデューサーである近田春夫氏が「小諸鉄矢とCM NETWORK」という名義を使用していたことが明らかになり、短期間ながら近田春夫氏が作曲者ではないかという説が浮上しましたが、近田氏本人がTwitter上で作曲した記憶がないと否定し、この説も立ち消えとなりました。

最終的に、この長年の謎に終止符が打たれたのは、楽曲制作の当事者である音楽プロデューサーの長戸大幸氏の発言によってです。2021年9月18日に放送されたラジオ番組「OLDIES GOODIES」の中で、長戸氏は「小諸鉄矢としてムーンライト伝説を作曲したのは、音楽プロデューサーの吉江一男である」と初めて公に証言しました。

また、吉江一男氏の証言によれば、この楽曲のメロディーの一部には、倍賞千恵子の楽曲「さよならはダンスの後に」からの影響、すなわちモチーフが取り入れられているとのことです。「さよならはダンスの後に」の作曲者である小川寛興氏は、自身の楽曲との類似性に気づき、日本音楽著作権協会（JASRAC）を仲介として交渉が行われました。その結果、「ムーンライト伝説」から生じる著作権使用料の一部を小川氏にも分配するという形で、両者の間で和解が成立しています。

楽曲の高い評価と影響力

「ムーンライト伝説」は、商業的にも大きな成功を収めました。オリジナル盤のシングルは、発売から数年を経た1995年2月には、日本レコード協会によってゴールドディスクに認定され、20万枚以上の出荷を達成したことが証明されました。オリコンの週間チャートにおける最高位は20位とされていますが、アニメ放送期間中のロングセールスによって累計売上を伸ばした典型的な例と言えるでしょう。

インターネット上の様々な世代別やジャンル別のランキングにおいても、この楽曲は常に1990年代を代表するアニメソングとして挙げられます。その評価の高さは公式な形でも認められており、2019年3月1日にはソニー・ミュージックエンタテインメントが実施した「平成アニソン大賞」において、1989年から1999年までの作品賞に選出されました。さらに、2020年9月6日にテレビ朝日系列で放送された特別番組『国民13万人がガチ投票! アニメソング総選挙』では、全アニメソングの中で12位にランクインしており、その根強い人気と影響力が改めて示されました。

多数のアーティストによるカバー

この楽曲は、その人気の高さから、アニメシリーズの展開や様々な企画の中で数多くのアーティストによってカバーされています。例えば、「美少女戦士セーラームーンS」および「SuperS」シリーズでは、桜っ子クラブさくら組の一部メンバーで構成されたムーンリップスによる新たな録音版が使用されました。彼女たちはミュージカル版で初代セーラー戦士を演じたキャストでもあります。

その他にも、江戸川みゆきや久川綾、井上喜久子といった声優、中川翔子、北出菜奈、吉岡亜衣加といった歌手、さらにアニメタルレディーやロボット帝国といったロックユニット、ラスマス・フェイバーによるジャズアレンジ、ももいろクローバーZ、LiSA、でんぱ組.incといった人気グループに至るまで、多種多様なアーティストがこの名曲を自身の解釈で歌い継いでいます。

また、アメリカでのアニメ放映時には、ニコール・プライス＆ブリン・プライス、後にオオサカ・ポップスターによって「Sailor Moon Theme」というタイトルで英語詞のバージョンが制作され、使用されました。近年では、「D4DJ Groovy Mix」や「バンドリ！ ガールズバンドパーティ！」といった音楽ゲームシリーズにも収録され、新しい世代のリスナーにも親しまれています。

特に注目されるのは、アニメ「美少女戦士セーラームーンCrystal」でセーラー戦士を演じたキャスト陣、通称Crystalセーラー5戦士によるカバーです。彼女たちはトリビュートアルバムでカバーを披露したほか、2023年に公開された『劇場版 美少女戦士セーラームーンCosmos』でも主題歌として再びこの曲を歌唱しており、作品と共に楽曲が受け継がれていることを象徴しています。

「ムーンライト伝説」は、そのキャッチーなメロディーと、世代を超えて愛されるアニメ作品の顔であることから、発表から四半世紀以上が経過した現在でも、多くの人々に口ずさまれ、様々な形で再解釈され続けている、まさにアニソン史における金字塔とも言える楽曲です。

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