ムーン川

ムーン川（ムン川）

ムーン川はタイ王国の東北部に位置し、コーラート台地を流れる大きな河川です。この川はメコン川の主要な支流の一つであり、その全長は約750キロメートル、流域面積は69,700平方キロメートルに達します。地元では「メナムムン」とも呼ばれ、その名の通り、地域社会にとって重要な水源となっています。

流路と地形

ムーン川の源流はナコーンラーチャシーマー県にあるラマン山で、標高は992メートルです。川は同県からコーラート台地の南部を流れ、西から東へと進みます。流域内ではブリーラム県、スリン県、シーサケート県を通り、最終的にはウボンラーチャターニー県のコーンチアム郡でメコン川に合流します。流路にはチー川など、ペッチャブーン山脈の多くの支流も流入します。

流れは構造平野を侵食し、川岸には自然堤防が見られます。しかし、これら堤防では浸水が避けられないため、人々は集落をより高い場所に形成しています。ウボンラーチャターニーなどがその一例です。

治水と洪水の問題

ムーン川流域の71%は農地で構成され、21%は森林です。気候は年間平均27℃で湿度は73%と比較的高いですが、年間降水量は1260ミリメートルにとどまり、雨季と乾季の差が大きい条件です。乾季には水分不足や土壌の塩分蓄積が農業に影響を及ぼすため、収量が不安定で生産性が低くなっています。

その一方で、流域にはいくつかのダムが建設されています。ムーンボンダム、ラムパーオダム、ウボンラットダムなどが代表的で、これらは治水や灌漑のために重要な役割を果たしています。しかし、下流には構造的に洪水が起きやすい場所もあり、特にウボンラーチャターニー県では毎年のように洪水が発生しています。2011年のタイ洪水や2022年の大規模洪水など、洪水の被害は地域に深刻な影響をもたらしました。

漁業の重要性

農業が困難なこの地域では、漁業が重要な収入源となっています。ムーン川では特に雨季に多くの魚が遡上し、住民はこの時期に大量に漁獲を行います。このため、川の魚は貴重なタンパク源であり、地域の糧食安全保障にも寄与しています。残った魚はパーデークまたは市場で販売し、他の農産物と交換する文化も発達しています。

下流域では漁業に従事する住民も多く、「トゥム・ラーン」という漁具や、「トゥム・プラーヨン」と呼ばれる大きな漁具を使用する漁法が存在します。しかし、漁業の発展に影響を与える問題もあります。1990年代以降、大型ダムが建設され、これにより回遊魚が産卵地にアクセスできなくなったことが指摘されています。ダム建設は確かに経済発展を促進しましたが、漁業に深刻な影響を及ぼし、住民からは抗議の声が上がっています。

結論

ムーン川は地域の人々にとって水や食料供給の基盤であり、流域の環境や社会経済に重要な役割を果たしています。しかし、ダム建設や洪水などの課題も抱えており、地域住民の生活に直接的な影響を及ぼしています。地域の問題を解決するための持続可能な管理や治水システムの構築が重要です。

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